序章
第1節 研究背景
インターネットの普及によって、ネット通信販売(以下ネット通販)は巨大な成長をとげた。中国の電子商取引は90年代にうまれ、2003年に淘宝網(中国のオンラインモール)が誕生した後、ネット通販は急速な発展期を迎えた。ネット通販の価格優位性と利便性により、ユーザーの数も継続的に増えている。消費財の総小売売上高の割合からみると、ネット通販の割合も2012年6.3%から2016年の14.9%まで着実に増加している。
しかし、ネット通販は匿名性と仮想性という特徴があって、市場の拡大と同時に、信頼欠如問題が深刻化している。たとえば、価格の詐欺問題、商品の質の問題、個人情報の漏洩問題など、現在ではネット通販の発展を阻害し、ネット通販業者の信用にも影響を与えるひどい社会問題になった。このネット通販の問題を解決するために、2014年3月15日、国家商工行政管理局は正式に「オンライン取引管理のための措置」を公布した。この措置は消費者の損失を減少するために、ネット通販を通じて買った商品は、理由なく7日以内に返品することができると規定した。しかし、措置をきちんと従うネット通販業者がすくなくて、ネット通販業者の信用問題がひどくなる一方だ。また、偽造品の販売を禁止するように、国内の最大のECプラットフォーム(企業や個人がネット通信販売の交渉を提供するためのプラットフォーム)として、アリパパ(淘宝網を経営しているネット通信販売会社)は年間10億元の資金を投入している。だれが偽造品や偽物などを販売しているか、だれが偽造品や偽物などを買っているかに関するデータベースを構築していると報道されたが、顕著な効果が見えていない。そして、ネット通販の普及によって、配送問題も深刻化している。商品の誤配送、破損、配送員のサービス態度の悪さが顧客のクレーム対象になって、クレーム率が年々上昇している。
その反対に、日本の電子商取引が90年代後半から本格化した以降、経済産業省によると、2015年のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)は前年比7.6%増で、1年間に9776億円も市場が拡大した。商品の質の問題、個人情報の流出問題などの問題もあるが、商品の質問題を起こしたのは主に海外会社、個人情報の漏えい問題の原因はサイバーの攻撃で、日本のネット通販業者が中国のネット通販業者みたいに顧客の個人情報をうることが存在しない。つまり、日本のネット通販安全性問題は存在するが、中国ほどひどい信頼欠如問題、配送問題になっていなく、ネット通販の発展を阻害する要因にもなっていない。
第2節 先行研究
謝憲文(2004)は中国における電子商取引の展開過程を概観し、BtoC(企業と消費者間の取引) 市場の現状を多角に考察して、市場拡大のネックとなっている諸問題を分析した。中国電子商取引発展の一特徴はB to C市場の急速な拡大である。しかし、市場規模の拡大により、「商品品質やアフター・サービスの問題」、「個人情報の保護が保障できない」,「商品代金の支払いの不便」および「価格魅力の不足」などの問題が発生した。結果として、ネット通販利用者の増加率が大いに増加したが、ネット通販経験者(再度ネット通販を利用する人)の増加率が低い。ネット通販商品も多様化し、ネット通販を利用する理由として、「費用節約」(ネット通販の商品の価格はリアル店舗より低い)の比率が上昇し、「時間節約」(店までの時間がかからない)の比率が下がった。2001年以降,ネットバブルの崩壊後、多くの企業は生き残るために,「付加価値の提供や採算性の重視」という新ビジネスモデルを構築した。そして、伝統的小売業がネットビジネスに参入しはじめた。しかし、今後の成長が予想できる。
孔令建(2016)は中国におけるネット通販の発展経緯を考察し、中国におけるネット通販の発展特徴と発展要因を説明した。発展特徴としては3つあり、一つ目は海外ネット通販企業は、買収・合弁などの手段を通, じ、中国市場への参入が急速に進められること。二つ目は、プラットホーム化競争が日々激化していること。三つ目は、ネット通販だけではなく、現実中の店の価格戦も白熱化すること。そして発展要因は2つあり、ひとつは伝統小売業発展の遅れ、もうひとつは電子商取引の人材教育を非常に重視するということ。しかし、中国ではネット通販を導入したとき商業環境基盤が未熟で、インターネットの普及によって、もともと存在した問題がさらに深刻になった。消費者視点からみると、信頼欠如問題と配送問題はもっとも大きな二つの問題である。彼はこの二つの問題はネット通販発展の阻害要因になったと述べている。
以上二つの先行研究を通じて、中国のネット通販の発展経緯と発展過程中にうまれたネット通販の発展を損害するネット通販業者の信頼欠如問題と配送問題の現状と成因がわかる。
そして、孔令建(2016)は信頼欠如の原因についても分析した。情報の非対称性、社会信用環境の未熟性、ネット通販の初期発展における経営戦略の偏向、ネット通信販売会社の不信行為と“眼見為実”という中国消費者の購買習慣という5つの原因である。
配送問題について顧婧(2009)は配達サービスにおける中国通販事業のリスクとECプラットフォームの対応.について分析した。中国の配送問題のトップスリーは、商品が約束した時間通りに届かないこと、貨物の紛失及び損傷である。配送問題を起こした原因は配送員の「素質」(中国の素質では教育をうける程度が低く、商品の扱い方があらく、荷物をぬすむなどを指す。才能ではない)が低いと推測できる。そして、第三者宅便会社への委託配送が春節のような祝日に七日間にずっと休みをとるため、その期間内の淘宝網商品の配達は全て配送できない。京東(中国で360buyを経営していた劉強東が設立したネット通販を提供する会社)などのネット通販大手は配達リスクを減少し、サービスの質をアップするために、自社物流システムを持ち、各地で配送員を配置することにより商品を配送する。淘宝網は未だに自前で物流をカバーする予定がないが、確実に商品が届くように「着払い」を決済方式に入れた。
第3節 先行研究における問題点
まず、謝憲文(2004)は中国における電子商取引の展開過程を概観し、B to C 市場の現状を多角に考察して、市場拡大のネックとなっている諸問題を分析し、「商品品質やアフター・サービスの問題」、「個人情報の保護が保障できない」,「商品代金の支払いの不便」および「価格魅力の不足」などの問題が提出された。しかし、中国においてネット通販は飛躍的な成長を遂げ、決済手段や価格はすでに消費者がネット通販を選択する理由となった。たとえば、アリペイ(アリババのQR・バーコード決済サービスで、主にはオンライン決済の業務をしている)とWeChatPay(中国大手IT企業騰訊が作った無料インスタントメッセンジャーアプリによるQR・バーコード決済サービスである)などの第三方支払いの出現と普及によって、商品代金の支払いの不便はすでに解決された。中国の各インターネット通販会社は消費者を囲い込むため、京東が6.18を割引の日にする。淘宝網は11.11に大量の商品を値下げする。ネット通販業者はリアル小売業と競争するために、商品の価格が実の店舗より低いと設定している。いま、ネット通販商品の安さはもう中国の消費者がネットショッピングを選ぶ理由になった。「価格魅力の不足」という問題もう存在しなかった。
そして、顧婧(2009)は配送問題を起こした原因のひとつは配送スタッフへの教育不足である。配送員の中に農民工の比率が大きい。しかし、現在中国では、配送員になる大学生もいる。大卒や高卒の人の比率もだんだん増えている。配送員のサービス問題がいまだに解決していないのはほかの原因が存在しべき。
第4節 研究目的
本論文の目的は、先行研究の整理分析を通じて、日中におけるネット通販の発展歴史を考察するうえで、現在の日中におけるネット通販の安全性問題を分析する。そして、日中におけるネット通販の安全性問題の相違点を分析し、相違点を起こした原因を探し出す。その成因を分析し、なぜ日本には改善していく、中国では改善していないかという問題を明らかにしたい。
研究手段として、日本のネット通販の発展過程と比べる。鈴木雄高(2012)は日本のインターネット通販市場の成長の背景にある利用者個人の購買の特徴と、個人の生活環境が購買行動に影響を及ぼす構造について考察した。インターネット通販市場の成長要因としては、ネット通販業者がリアル小売業が対応しきれない消費者ニーズを対応でき、購買するカテゴリーの幅を広げる。既存利用者の利用頻度が増加している等が考えられる。そして、インターネット通販の利用頻度が高いのは経済的ゆとりはあるが、時間的ゆとりがなく、リアル店舗に買物出向する時間がない人。あるいは、インターネット利用時間が長く、かつ、交友関係が広い、情報や知識を豊富に持っている人。日本のネット通販市場規模が拡大している原因は購買カテゴリー数が増加した影響で利用頻度が高くなる利用者が多いと推測できる。
第5節 論文の構成
本論文は第一章から第四章まで構成される。
第1章は中国におけるネット通信販売の発展過程と発展過程で生じる安全性問題を説明する。
第2章は日本におけるネット通信販売の発展過程と発展過程で生じる安全性問題を説明する。
第3章は日中におけるネット通販の問題の相違点と成因を分析し、なぜ日本には改善していく、中国では改善していないかという問題の原因を明らかにする。
第一章 中国におけるネット通信販売の発展過程と問題
1.1 中国におけるネット通信販売の発展過程
中国におけるネット通販の発展はインターネットの普及と繋ぎ、その発展過程は四つの段階に分けられる。
まずは探索段階(1993年~2002年)である。この時期において、伝統小売業発展の時間が短いため、全国をカバーできる規模に成長しなく、ネット通販の発展に成長の空間に残した。そして、1993年の国際インターネット会議では、中国のコンピュータ業界の専門家がインターネットへのアクセスを要求した。1994年5月、北京で最初の「Eコマース国際フォーラム」が開催され、「Eコマース」(電子商取引)という概念が正式に中国に導入された。1994年10月、北京は「アジア太平洋地域のEコマースセミナー」を開催し、中国でEコマースの概念が広まり始めた。
1995年5月,中国最初の民営ISP 企業「海威」が誕生し,インターネットの啓蒙者としての役割を果たした。その後,ネット接続を主業務とするISP 企業が相次ぎ出現し,インターネット知識の普及やインフラの整備も一定の進展を見せ始めた。同時に、中国のインターネットも商品化し始め、ネット通販サイトは上がり始めた。中国商品注文システム(CGOS)の運用開始後、アリババ、8848や「Ebay.com」が相次ぎと設立された。しかし、2000年にネットバブルの崩壊は,中国IT 産業に大きな衝撃を与えた。それからネット通販は長い「氷河期」を経験した。
第二段階は転換期(2003年~2007年)である。この段階では、ネット通販企業は個人に拡張された。 2003年、SARSの荒廃により、伝統的小売流通業は未曾有の打撃を受けたことに反して,ネット通販は新たな機会を迎えた。例として、2003年5月にアリパパはTaobao.comを設立し、C2C市場に参入した。 2004年1月、京東はネット通販に関わった。 2007年11月、アリパパは成功に香港のメインボードに上場した。
中国政府も有力な政策を公布しIT 産業の発展を大きく促進している。たとえば、2004年3月に国務院理事会が「中華人民共和国の電子署名法(案)」を再検討し承認し、2005年1月に国務院総本部が発行した。2007年6月、国家発展改革委員会と国務院の情報局が共同で、中国初の電子商取引開発計画「電子商取引開発のための第11次5カ年計画」を発表した。
第三段階は成長期(2008~2012年)である。2008年7月に、中国は世界最大のインターネット人口となりました。 2008年6月末の時点で、中国インターネットネットワーク情報センター(CNNIC)の統計によると、中国のインターネットユーザーの数は253万人に達し、インターネットユーザーは世界で一位になった。2010年の「政府業務報告書」で、温家宝首相は貿易循環システムなどのインフラ施設の構築を強化し、積極的に電子商取引を発展させる必要があると明言した。
2010年12月に、当当網はニューヨーク証券取引所に上場した。2012年には、「天猫」は淘宝網から独立して運営し、ブランド割引ウェブサイトVipshopがニューヨーク証券取引所に上場され、2012年には淘宝網と「天猫」の取引高は10000億元を超え、「双十一」の取扱高は362億元に達した。
第四段階は成熟期(2013年~現在まで)である。2013年、中国のネット通販の規模は10兆元を超え、オンライン小売取引の規模は1.85兆元となり、消費財の総小売売上高の7.8%に相当した。2014年6月に、中国のネットショッピングユーザーの数は3億3200万人に達し、ネット通販を使用している中国のインターネットユーザーの割合は52.5%である。2014年、京東は正式にNASDAQに上場した。アリババは正式にニューヨーク証券取引所で一株当たり68米ドルの発行価格に上場し、米国の歴史の中で最大のIPOになった。2015年5月、国務院は「新たな経済力の開拓を加速するための活発なEコマースの発展に関する意見」を発表し、Eコマースの革新と発展をさらに促進すると表明した。
いま中国におけるネット通販の現状は、ネットワーク第三者支払い、ネットワークマーケティングや物流などの生産サービスの開発を促進し、巨大なeコマースエコシステムを形成している。
1.2 中国のネット通信販売における安全性問題
ネット通信販売の発展が中国に巨大なeコマースエコシステムを形成している同時に、ネットショッピングに関する安全性問題も相次ぎにあらわれ、いまはもう重大な社会問題になって社会全体に注目されている。
1.2.1 価格詐欺
消費者がット通販を選択する一番の理由は商品の価格がやすいである。2009年、淘宝網
が双十一(商品の価格を大幅にさげる)を行い以来、毎年取引量が伸びている。2018年の取引量が2,135億で、巨大な成功を収めた。現在では、電子商取引業界で毎年恒例のイベントとなっており、徐々に国際的な電子商取引業界に影響を与える。
しかし、こういう成功のうらには価格詐欺という問題があらわれた。たとえば、「9月に、2つの櫛は160元、そして今一つが110元になった」、「事前に服をショッピングカートに追加したが、それが499元から599元に変わるのを見った」などのクレームがよく報道される。
価格上昇に加えて、双十一に経営者は商品の販売を促進するための策略も詐欺行為に存在する。新聞によると、製品は10月20日の0:00に売り出しを開始し、最初の1分間の預金は免除され、その他の制限は示されず、19日の23時53分に最初の「2000人しか」
というちっちゃくてぼんやり文字があらわれた。そして20日の0時、ブランドの宣伝用コピーは急激に変化し、「2000人しか」が明確になり、大きくなった。
1.2.2 商品の質の問題
ネット通販最大の特徴といえば、やはり仮想性である。実体の店で買い物と違って、ネットショッピングする際に消費者は現物を直接に触れることができない。商品の善し悪しを確認したいなら、ネット通販業者が提供する写真、商品の紹介に関するテキスト、買った人のレビューを見ることしかできない。しかし、これらの写真やテキストはビジネスの主観的な色であり、レビューを書いた人は経営者が雇った人がわざと好評を書いた可能性が高い。つまり、信用度が低い。ネット通販業者は暴利を稼ぐため、それを利用して、不良品や偽物を消費者に売る。
2014年下半期に、国家工商管理局と中国消費者協会が9つの電子商取引プラットフォームに対し調査を行い、その結果、7つのプラットフォームが偽造品を販売していて、または質が高くない品物があることを示した。淘宝網、京東などの偽造品に関与する電子商取引プラットフォームは、それ自体で偽造品を販売するのではなく、「加盟店参入」の形でプラットフォームに参入する第三者が偽造品や不良品を売っている。多くの加盟店は偽造品を販売しているという状況から見ると、Eコマースプラットフォームの監視メカニズムが機能していないと考えられる。
国内の商品の質の問題があんまりひどいので、近年海外の商品を選ぶ中国の消費者が増えつづけている。天猫の傘下は天猫国際があって、専門的に海外の商品を扱う。しかし、最近天猫国際にも不良品が多く、海外の商品と言われるが、実際には国内で生産したものを海外製品に見せかけていると報道された。
1.2.3 配送問題
中国におけるネット通販の商品配送は、主に自社配送と第三者宅配会社(第三者宅配会社は中国の快逓公司に相当する)委託配送の二つに分けられる。中国において、自社配送のサービス・レベルが高いため、ネット通販会社はほとんど第三者宅配会社に委託し商品を配送する。こういう商品配送の方式は物流コストと効率の面にメリートがあるが、デメリットも明らかである。
第三者宅便会社委託配送のサービス・レベルが低いため、商品が消費者に届かないこと、配達サービスがもっとも顕在化した問題である。また、郵便物遅延、商品の紛失などの問題がよくあげられている。
そして、近年、現在の中国の配給システムでは、開発の不均等という現象がある。大都市の配給ネットワーク資源は比較的豊富であり、他方では農村配給ネットワークの開発は依然として非常に不完全である。そのため、荷物の代理受取りサービス「菜鳥驛站」があらわれ、目的は郵便物が届いたときに、家にいない人あるいは受け取るに不便な人に、一時的にあづけられる場所を提供する。しかし、一部の配送員は「菜鳥驛站」の出現によって、わざと家に届かなく、驛站において、消費者にみずから郵便物に取りに行くと通知し、本来の目的を転倒させた。
表1 国家郵政局及び各自治区郵政管理局へのクレーム分類
クレーム問題 |
件数 |
比率 |
配達サービス問題 |
1093 |
39 |
時間通りに届かない |
1050 |
37.5 |
商品の紛失、減少 |
515 |
18.4 |
商品の損害 |
98 |
3.5 |
商品の受け取るおよび発注のサービス問題 |
37 |
1.3 |
費用の違法徴収 |
7 |
0.2 |
その他 |
1 |
0.1 |
出所:国家郵便局 中商産業研究院 http://www.askci.com/news/chanye/20180202/173501117519_3.shtml より 筆者作成
1.2.4 個人情報の流出
消費者がネット通販を利用するとき、常にEメールアドレス、名前と住所、連絡先番号などの個人情報を記入することを要求される。ネット通販業者は絶対に秘密を守り、決して開示しないと約束する。しかし、経営者たちはすでにこの個人情報を他の目的に使用している。たとえば、商品の販売を促進するためのスパムメッセージ、個人的な利益のために第三者に売ること。
そして、伝統的な買い物方法と違い、ネットショピングの支払いは、対面取引ではなく、第三者プラットフォームの支払い(アリペイ、WeChat)によって行われる場合が多い。ネット通販支払いセキュリティは、主にコンピュータネットワークのセキュリティとユーザ端末のセキュリティに依存している。コンピュータネットワークとユーザー端末に問題がある場合、消費者のパスワードやパスワードなどの情報が盗まれて漏れる可能性があり、財産が不正使用されて譲渡されるという大きなリスクに直面する。
1.2.5 アフターサービスへの懸念
ネットの仮想性とネット通販業者の不信行為により、中国の消費者はアフターサービスへの懸念を持っている。
消費者がネットを使って、ふいに偽造品や不良品を買ったとき、ネット通販業者に返品するには困難なことである。このような不信行為の発生を阻止するため、国家市場監督管理総局はネット通販の商品が買った後の7日間に理由なく返品することができると規定した。「消費者権利保護法」の第25条より、消費者は後悔する権力を持っているが、ネット通販業者の理不尽な要求によりなかなか返品できない。
まずは、後悔の権利の適用の範囲において、いくつかの企業は勝手に消費者保護法の第25条を拡大する。「消費者権利保護法」の規定では、原則として、オーダーメイド商品、生鮮食品、デジタル商品、および即時配達の雑誌は適用されず、「商品の性質によっては適用されない」と規定されている。多くのネット通販事業者はこの規定を使用して、適用されない商品にも適用する。
そして、後悔する権利がない商品については、「消費者権利保護法」では、適用されない場合に確認を義務付けているが、実際には多くのネット通販業者は確認しなく、消費者が商品に返品したいときに「これは返品しできない消費者」とつたえる。また、損なわれていない商品の判断において、多くのネット通販経営は商品の包装が解体されたら、その商品が不完全であるという厳しすぎる理由で商品の返品を拒絶する。最後に、一部のネット通販事業者は、返品前に関連組織の検査報告書を提出し、製品品質に問題があることを証明する必要があると消費者に要求する。一番よい状況といえば、ネット通販業者は返品を同意するが、消費者自身が送料を支払う。その検定料と送料一般的に商品の価格より高くので、大部分の消費者は返品する要求を放棄する。
第二章 日本におけるネット通信販売の発展過程と問題
2.1 日本におけるネット通信販売の発展過程
日本において、ネット通販が誕生する前に、通販が百年以上の時間に発展していた。伝統的な商業環境が成熟し、ネット通販の発展のためのよい基盤を築いた。そして、中国と同様に一般家庭にインターネットの普及にともなって、家電量販店や大手メーカーなどが次々と通販に参入した。日本におけるネット通販の発展段階は四つの段階に分けられる。
第一段階は黎明期(1995年~1999年)である。Windows95が発売された以来、一般家庭がコンピュータやインフラが整え、インターネットの利用人数がじんそくに増加した。それにつれて、リアル店舗を持つ大手小売りや、食品業界や製薬業界の大手メーカーによる通販参入が相次いだ。95年3月、米国でYahoo!が設立され、7月にAmazon.comがサービスを開始した。翌96年には日本でヤフー株式会社が、98年にアマゾンジャパン株式会社がそれぞれ設立され、日本事業を本格的に開始していく。いまはもう市場シェアをしめる最大の会社の一つになった。もうひとつの楽天は、97年2月に株式会社エム・ディー・エムを設立し、5月に出店型のEコマースモールという形(淘宝網と同じ)で「楽天市場」を開始させた。この時期において、日本は主にネット通販に関する研究と実証研究を行った。
第二段階は第一次成長期(2000年~2004年)である。2000年に入ると、ネット通販を利用する人数が増加していく、量販店やメーカーによるネット通販の参入も増え、楽天市場の出店数は2002年10月までに6000店舗を突破した。また、自社の通販サイトを構築するASPサービスも普及し、ネット通販の範囲は急速に拡大していく。アマゾンは2001年に、出店型の販売形式として「Amazonマーケットプレイス」を開始した。ネット通販の環境改善により、ネット通販は急速に成長した。
第三段階は第二次成長期(2005年~2009年)である。2005年ネット通販の市場規模3.5兆円、その後4年で約2倍に拡大した。異なる業種のネット通販参入も増加し、たとえばユナイテッドアローズやベイクルーズがネット通販を開始した。またこの時期において、配送方法も変わり始めた。Amazonは、商品を保管から配送まで委託できるサービスを開始した。2009年にはAmazonが当日配送サービス、楽天市場も翌日に商品が届くサービスを開始している。こうして、ネット通販が継続的に拡大する中、2009年にアマゾンがはじめて国内通販量の一位になった。
第四段階は成熟期(2010年~現在まで)である。2010年、フラッシュマーケティングという、共同購入において割引になるクーポンサイトが次々と登場する。2011年にはFacebookがeコマースを開始し、楽天がソーシャルとの連携を始める。通販サイトはコミュニケーションやマーケティングツールとしての活用事例が多くなった。また、スマートフォンの普及により、アマゾンや楽天などのネット通販会社はスマートフォン内で購入できるアプリを開発しつつある。消費者がいつでも、どこでもネット通販を利用できることになっている。2012年にかんたんに通販サイトを制作できる無料版のASPカートが発売され、最短で数分で出品できるによって、利用者は増加している。
経済産業省が発表した「平成29年度電子商取引に関する市場調査」によると、2017 年のBtoC(企業と消費者の取引)市場規模は16 兆 5,054 億円、CtoC(消費者どうしの取引)による市場規模は 3,569 億円、BtoB(企業どうしの取引)市場規模は、317 兆 2,110 億円となった。
2.2 日本におけるネット通信販売の安全性問題
日本におけるネット通販の発展歴史はながくないが、いまは数千億円の市場規模となった。こうした発展過程中、中国ほどネット通販の発展を阻害する問題になっていないが、インターネットの匿名性や仮想性により、いくつかの問題は確実に存在している。それについて、以下でまとめる。
2.2.1 商品詐欺
インターネットショッピングを利用する際に、一般的な流れは消費者が商品を注文し、支払いが確認した後、ネット通販業者が商品を発送する。代金を払う方法として、前払い、着払いと後払い三つの決済方法がある。ネット通販の取引では、商品購入を申し込むときに代金を支払ってしまい、つまり前払いという決済方式は通常である。しかし、前払いによって、発送日を過ぎても商品が届かなく、売り手にメールで連絡したが、何も返事がないあるいは「商品はすでに発送済み」と返信し、商品は相変わらずに届かないという事例が多い。そしてこういう場合、売り手はよく個人経営あるいは海外会社の状況が多い。
たとえば、ある40歳代男性は目的のゴルフクラブをネット検索し、この業者のサイトを見つけた。他の業者よりかなり安かったので注文し、代金は前払いので、指定の個人名義の口座に注文の2日後に入金した。入金後すぐに商品を発送するとのことだったが、数日しても商品は届かなかった。業者にメールで問い合わせたところ、具体的な日にちをあげて「送る」とのことだったので待っていたが、その後いっこうに商品は届かなかった。「注文をキャンセルし、代金を返金してほしい」とメールを送ったが「すでに商品は発送済み」と返事しただけ、その後1週間経つが、商品は届かない
2.2.2 個人情報の漏洩
ネット通販は、利便性という特徴を持ち、消費者の選択範囲を広げ、実の店よりやすい値段設定やキャンペーン等の販促も手軽に実施できる。しかし、2000年代後半から、通販サイトへのサイバー攻撃による個人情報の流出が深刻化し、不正アクセスによるサイバー攻撃も頻発になっている。
たとえば、価格情報提供サイトは2005年5月に、ウェブサイトに不正なプログラムが仕掛けられ、閲覧したユーザがウイルスに感染したという事を発表した。音響機器・楽器通販サイトは2008年4月、サイバー攻撃により顧客情報が10 万件弱流出した可能性がある事を発表した。
このような個人情報の漏えいにより、顧客のアカウント、パスワードやクレジットカードに関する情報が流出し、不正利用される可能性が高い。メールアドレスや電話番号などが流出した場合には、迷惑メールや勧誘電話、メセッジが増加する。電話詐欺やメール詐欺の対象になるリスクも高く、金銭的面でも、精神的面でも被害を受ける。
こういう状況になると、個人にとしては大きな損失というまでもないが、サイバー攻撃を受けた企業にとって、社会的信用を失う一方だということが予想できる。
2.2.3 海外会社の商品の質の問題
アマゾンや楽天などのネット通販会社が90年代後半から発展して、いまは日本国内に取引をするだけではなく、海外での事業にも本格的に取引している。アマゾン、楽天に出店している経営者は日本国内での会社や個人の経営者とは限らなく、アメリカ、欧州やアジアなどの会社や自営業者がだんだんあらわれている。また、栄養品や化粧品などの商品を検索するとき、並行輸入品という文字がででくるもおかしくない。
一般的に、日本の消費者が海外のネット通販会社の商品を買う状況が二つに分けられる。ひとつの状況は、海外会社が売っている商品の価格は日本国内よりやすく、もうひとつの状況は海外の会社が日本国内にまだ売っていない新商品あるいは在庫きれの商品をうっている。しかし、海外との取引はトラブルが生じることが多く、「不良品・偽物を買った」というのはもっとも大きな問題である。
国民生活センター越境消費者センターの報告によると、2017年度に越境消費者相談の件数は4,086件であり、2013年以降4,000件を超えて、「詐欺・模倣品トラブル」が26%に達した。そして、相手方事業者の所在地としては、「アメリカ」が最も多く(31%)、続いて「中国」(13%)、「イギリス」(8%)の順で、これら 3 カ国で全体の約 5 割を占める。
第三章 相違点と成因
本章は日中におけるネット通販の安全性問題の相違点とその相違点を起こした原因について分析する。その成因からどうしてネット通販の安全性問題が中国で解決できなく、日本は解決したということがわかりたい。
3.1 商品の質の問題、詐欺問題における相違点
中国のネット通販における不良品や偽物氾濫の状況にはんして、日本国内のネット通販業者が不良品や偽物を売るには想像しがたい。通常に、日本の消費者がうっかり偽造品を買った場合、この商品が海外会社が売っている。
不良品や偽物をうるネット通販業者が多く場合に、Eコマースプラットフォームの信用に関する評価も下がり、たとえば、アリパパは米国の2018年の悪質市場に指名された。
こういう新聞が報道され、民衆はアリパパを放棄して、ほかのEコマースプラットフォームを選択するはずだ。しかし、2019年のアリファイナンシャルによると、2019年3月末の時点で、淘宝網と天猫を利用するユーザー数は7.21億に達し、前年同期と比べる1億400万増加し、前四半期と比べると2200万増加した。3月末まで、年間アクティブ消費者数は6億5,400万人に達し、前年同期比で1億2,200万人増加した。現物商品取扱高は、2019年度に前年比31%増、第4四半期に33%増となった。つまり、使用する人数はへるところがあえて増えた。
しかし、アリパパは偽造品の販売を禁止するため、年間10億元の資金を投入していて、2018年には79億元の偽造品を削除した。そして、中国政府もネット通販の不良品や偽物氾濫の現象を軽減するため、2010年5月31日に国家商工行政管理局は「オンライン商品取引および関連サービス行動の管理に関する暫定措置」を公布し、2014年3月15日に「オンライン商品取引管理対策」に変えて、そしてようやく2019年1月1日に『電商法』が施行された。ネット通信に関する法律は徐々に改善されているが、商品の質の問題がなかなか改善されない。
また、両国の詐欺問題にかんしては、詐欺の内容が違う。中国は2009年、アリパパが双十一を行い以来、巨大な成功を収めたが、近年部分的な経営者が商品の価格をまずあげて、そして双十一がくる日に割引する。この価格の二重設定の行為によって、商品の値段はいつもより高い可能性がある。あるいは、タイムセールの前日に特価商品の制限条件があやふやて、はじめる直前に急に大きくなりはっきり見えられる。こういう行為に対し、「価格違反に対する行政処分」は違法所得を没収し、違法所得の5倍未満の罰金を科す、違法所得がない場合は50,000元から500,000元の罰金を科すると規定したが、価格詐欺の現象は軽減されていない。最近、日本の電子商取引プラットフォームはアリパパの影響によって、双十一のイベントも行いはじめたが、たとえばyahoo.ショッピングはこの日に大量の商品の値段を下がるが、こういう詐欺行為がない。
日本のネット通販における詐欺問題は商品を注文したが、発送日を過ぎても商品が届かない。経営者にメールで連絡したが、何も返事がないあるいは「商品はすでに発送済み」と返信したが、商品は相変わらずに届かない。そして、この詐欺問題を起こした経営者は個人や海外会社の場合が多い。
3.1.1 評価システムの違いとやらせレビューの見分け方の難しさ
ネットの仮想性のため、ネット通販を利用する際に消費者は直接に商品に触れて、商品を確認することができない。消費者はただネット通販業者が提供した写真や商品に関する説明を通じて、商品を確認する。しかし、写真や説明は本物の製品の間に一定の差があり、たとえば色、サイズなど。このとき、すでにこの商品を買った顧客のレビューは買いたいがまだ迷っている人にとって重要な判断根拠となる。
しかし、中国において商品に関する顧客の評価はもう信じられない。まず、淘宝網に出店している経営者は学生や家庭主妇などを雇って、商品を買ってよいレビューを書く。ただし、この金はレビューを書く人が支払わなく、ネット通販業者が自分で支払う。つまり、架空注文とやらせレビューである。なぜなら、淘宝網のランキング順に関わるからである。淘宝網での店の並び方は総合ランキング、売上ランキング、信用ランキング、価格が高い順、価格が安い順という五つのランキング順がある。そのなかに、一番に用いられているランキング順が総合ランキングであり、この順はネット通販会社の商品の質量、経営者のサービス態度、信頼度の高さと低さ、販売量によって決められるので、消費者のレビューが重要な参考になる。ネット通販事業者にとって販売量が多いほど、レビュー数が多いほど、自分の店を顧客が検索しているときに第一位にランクする可能性が高くなり、商品がもっと売られる。だから、架空注文とやらせレビューは中国に多発している。
ネット通販業者にとって店舗の信頼度はとっても大切なもので、信頼度をあげたいなら、消費者の好評は必須なものである。また、わるいレビューが店の信頼度をさげるのは当然なことだが、消費者が中等な評価を書いた場合店舗の信頼度に影響がないが、ほかの消費者の好評率に影響をあたえる。だから、中国のネット通販業者は好評だけを追求する。しかも、淘宝網などのECプラットフォームが評価システムと注文システムを連結していて、レビューを書いた顧客が匿名でも、ネット通販業者は注文を通じて簡単に悪評や中等な評価を書いた消費者の個人情報を手に入れる。
だから、もし中国の消費者が製品に関しわるいレビューを書いたら、ネット通販業者はすぐに電話をかけ、よい評価に変えたら、割引をするあるいはクーポンをあげると頼む。消費者が拒絶した場合、経営者は何度でも消費者に電話をかけ、消費者の生活に迷惑をかける。一部の消費者は割引やクーポンが欲しくて、そしてこういう迷惑を避けたいので、ネット通販業者の頼みをうけ、よい評価に変える。あるいは、ネット通販業者は消費者を口ぎたなくののしり、殺すと脅かす。消費者が経営者の報復が怖くて、悪評を好評に変える。一部の消費者は最後まで拒絶するなら、ネット通販業者はわるい評価を書いた顧客の個人情報のすべてを公に暴露する。たとえば、「人民日報」の報道によると、河南省鄭州市の消費者、李さんは記者に、淘宝網でドライフルーツの小包を2、3個購入したが、品質に問題があり、数も足りない。ネット通販業者と数回の交渉の後、相手側が腹を立てて、「悪いレビューを書いた場合はすぐにチケットを購入し、家族全員を殺す」と脅迫した。また、淘宝網では消費者が15日すぎて、評価しない場合、評価システムは自動的に好評を黙認する。そして、現在レビューアのレベルもだんだん上がってきている。以前のやらせレビューの格式は単一で、数が多いである。たとえば、「这个很好吃」(これはおいしい)、「这个很不错」「这个很棒」(これはとてもいい)などの簡単なことばで、写真なかがついていない。消費者が見た瞬間にこれは本当なレビューではないということがわかる。しかし、現在のやらせレビューは写真つきて、「这个很不错」「这个很棒」(これはとてもいい)などの簡単なことばから商品の使用感、包装、数などを含めるレビューにかわた。これは正しいレビューと混在していて、まぎらわしいと感じ、消費者がサクラレビューを見つけるのは難しくて、偽者や粗雑品などを買う可能性が大きくなる。淘宝網などの中国ECプラットフォームはやらせレビューの問題に対し黙認の態度を取っている。
日本のECプラットフォームは注文システムと評価システムを切り離している。たとはば、アマゾンを利用して買い物する際に、注文履歴からみると、レビューを書くという選択肢がない。レビューを書いたいなら、もう一度購入した商品の画像をクリックして、下のレビューを書くのポッターを見つけクリックする必要がある。評価を書く消費者の名前は表示されないので、製品に関するわるい評価があっても、ネット通販業者がその消費者の本当の名前に知らない。消費者に電話をかけ、評価を変えるのは当然できないことである。そして、淘宝網と違って、アマゾンや楽天などのECプラットフォームの評価システムは15日すぎて評価を書いていない顧客に対し自動的に好評になるというプロセスが設定していない。日本のECプラットフォームもやらせレビューが存在していて、たえおえばアマゾンはサクラレビューが多発している。しかも、最近アマゾンでやらせレビューを積極的に行っているのは中国系の業者で、やらせレビュー問題が一層深刻化していく。しかし、中国企業が積極的にやらせレビューを書いているため、日本の消費者にとってレビューの見分け方は中国の消費者ほど難しくない。まず、中国企業なので、評価の日本語が翻訳機により翻訳したもの、日本語になっていない。あるいは日本語がしゃべられる留学生などを雇ってレビューを書く。だから、言葉遣いがおかしいレビューが多い。第二、中国企業が検索上位をねらい、短時間に大量な好評を書くため、5つ星と1つ星に二極化している評価が多い。日本の消費者はこの二点を根拠として、B級品や偽造品などを避けられる。第三、中国企業は日本人が書いたレビューの信頼度が高いと信じ、レビューを書いた人の名前が日本人のフルネームの場合、商品の品質が問題がある可能性が大きい。
やらせレビュー問題に対しアマゾン側は2016年10月にレビューのガイドラインをより厳しく改定し、商品の提供を受けるのと引き換えにコメントすることは禁止された。従来のガイドラインでは、レビュアーが商品をメーカーから無料もしくは割引料金で入手した場合、その事実を開示した上であればレビューを投稿することは可能だが、新ガイドラインでは対価と引き換えにレビューを投稿することは禁止になった(アマゾンからの依頼レビューを除く)。そして、ネット通販会社の自作自演のやらせ行為が発見されたら、Amazon出品権限の迅速かつ永久的な取り下げ、および売上金の支払いが留保される。すべての商品のレビューの削除、および今後のレビューや評価の受信が制限される。Amazon出品からの永久的な削除となる。出品者に対する法的手段(訴訟、および民事ならびに刑事事件執行当局への照会など)を取り、名前およびその他関連情報の公開する。
3.1.2 市場の寡占性
中国の消費者が、淘宝網で不良品・偽物を買う可能性があるということがわかっても、淘宝網を選ぶ。それは、中国のEC市場シェアの第一をしめるのはアリパパ集団である。日本貿易振興企業(JETRO)が公表した「ジェトロ世界貿易投資報告」2017年版(図1)によると、アリパパ集団は中国のEC市場シェアの43.5%をしめ、二位の京東が20.2%で、一位のアリパパ集団の差は倍がある。アリパパが中国ECプラットフォームのトップになる重要な理由のひとつは商品のそろった程度がほかの電商プラットフォームでは比べものにならない。2017年3月末まで、アリババ・グループはCtoCの王者といわれ、中国のC2C市場シェアの94.1% をしめている。中国Eコマース研究センタ(100EC.CN)のデータによると、2017年には、淘宝網の特色商品を売る店舗は10万を超え、取引量は淘宝網の総売上高の20%を占め、淘宝網の多様化市場のバックボーンとなった。そして、京東はB2Cを中心として経営していて、個人業者が京東に出店することができない。これもJD.comが中国の市場シェアをしめる2位になり、一位のアリパパグループにかなわない重要な理由である。淘宝に買えられる商品はほかのECプラットフォームに買うことができない可能性が大きい。つまり、中国の消費者にとって、淘宝は替えられない存在である。そのため、大量の個人業者が淘宝だけに集中し、中国の消費者が偽造品や偽物を買ってしまう確率が高まった。
日本には、楽天とAmazonは日本国内の二つ最大のEコマースプラットフォームといえる。Amazonは日本のEC市場の20.2%をしめ、トップである。二位の楽天は20.1%で、首位の一位のアマゾンにほぼ差がない。つまり、楽天とアマゾンは日本国内でライバルということがわかる。そして、楽天とアマゾンの品揃えの程度は大した差がないである。2012年時点では、楽天の登録商品数は約1億点、Amazonの登録商品数は約5千万点とされている。しかし、楽天の場合、このなかに重複する商品がかなり含まれているので、実質はどちらも同じくらいである。ただ、服やファッション関連は楽天市場の方が品揃えが多い。
つまり、日本の消費者にとって選択の余地が残されている。個人業者はアマゾン、楽天ともに出店する可能性はあるが、中国みたいに淘宝だけに集中することがない。偽造品や偽物を買ってしまう確率は大いに下がるとはいえないが、すこしでは下がるとは考える。
図1 主要国のB2C取引額と市場シェア
出典:日本貿易振興機構(2017年)「ジェトロ世界貿易投資報告:転換期を迎えるグローバル経済 総論編ポイント」P10
3.1.3 日中の消費者がネット通販を選択する理由の違い
各人それぞれがネット通販を選択する理由が違う。ある人がネットショッピングを選ぶ理由家に出る必要がなく、パソコンやインターネットがいれば、簡単に買い物できるから。ある人はさまざまな商品を比較できるから、そのなかに一番やすい商品を買うことができるから、インターネットを使って商品を購入する。さらに、近年SNSの流行によって、EC会社がFacebookやウェイボーなどの社交アプリと連携して、消費者が簡単に商品のリニューアル情報や特売譲歩など手に入れられる。また、スマートフォンの普及により、ますます多くのEC会社が携帯で買い物できるアプリを開発しつつあり、人々にいつでもネット通販を利用する環境を作った。
日中の消費者がネット通販を選ぶ第一の理由が違う。図2が表示したように、日本の消費者がネットショッピングを選択する一番の理由は店舗の営業時間を気にせず買い物できる。また、野村総合研究所が1万人を対象に行った調査によると、「利便性消費」の割合が、2000年の37%から2015年には43%へと増加したことがわかった。つまり、日本の消費者の間に購入する際に安さよりも利便性を重視するという消費観念が2000年から2015年に大きく増加していて、「とにかく安いものを買いたい」とする低価格志向は減少傾向にある。考える手間を省く商品を選ぶという「利便性」を求める日本人の行動様式うらには、、商品のブランドを重視する傾向があるということである。このブランド志向は、高級なものを求めるというよりも、「保証された質」「安全」を求める心性によると言える。そして日本の消費者はネット通販を選択する第二の理由は商品の安さといえるが図3によると価格が品質に見合っているかどうかをよく検証して買う比率は63.4%をしめる。
図2 日本の消費者がインターネットを使って商品を購入する理由
出典:鈴木雄高(2012)「インターネット通販における消費者の生活環境と購買行動に関する研究」, p.35.
図3 日本人の消費生活における考え方
出典:野村総合研究所(2009)「NRI生活者1万人アンケート調査」
https://perigee.yomiuri-is.co.jp/マーケティング/AOIPF
しかし、中国の消費者にとってネット通販を選ぶ一番の理由は低価である。図4によると、70%を超えた中国の消費者がネットショッピングを選択する理由はネット通販の商品の方が実に存在している店舗よりやすいである。だから、品質がそれほど悪くなく、人々に受け入れる範囲にある偽造品、たとえば書籍、靴やバッグなど、こういう種類の不良品や偽物は低価をもとめる中国の消費者の要求を満たした。これはネット通販における不良品・偽造品市場の繁栄を促進している。
図4 中国の消費者がインターネットを使って商品を購入する理由
出所:http://www.ebrun.com/20130808/79377.shtml
そして、成長期の段階において、市場開放がさらに進み、中国の消費者がネット通販を選択する第一の理由により、各ECプラットフォーム間競争がいっそう激化するに至った。多くの中国企業は生き残る為に、投資を積極的に行い、短期間に市場シェアを獲得するために、商品種類を増やして、商品価格を下げる。“最大・最強”の通信販売会社を目指している 。たとえば、2009年にジャック・マーは2年前に提出した「大淘宝戦略」をもう一度打ち出した。なぜなら、アリパパの2009年第1四半期の純利益は、前年同期比で15.7%減少するからである。「大淘宝戦略」とは、淘宝網をオンラインストアプラットフォームから電子商取引インフラストラクチャプラットフォームに変換し、低コストかつ高効率で企業が電子商取引分野に参入できるようにすることである。伝統的な企業の転換を支援するために、中小企業は、淘宝網が提供する総合的なソリューションを使用して電子商取引を開始できる。この戦略により、淘宝網の商品の種類が豊富になり、さまざまな分野へ進出できる。また、淘宝網は発展の初期により多くの企業や個人を引きつけるため、出店料は不要と宣言した。これも、現在の淘宝網の品揃えによい基盤を構築した。
2012年、劉強東はWEIBOに京東の大型家電製品は3年以内に売上総利益がゼロになり、すべての家電製品はGUOMEI 、SUNING(中国の家電小売販売会社)より10%安いことを保証すると宣言したことが家電業界の値下げ競争加熱の始まりとなった。これは中国のインターネット通販会社が価格をめぐる不正当競争の象徴的な事件になった。京東の挑発におんじて、SUNINGは「価格優位性を維持することは、消費者に対する私たちの最も基本的な取り組みである。家電製品を含むSUNINGのすべての製品の価格は必然的に京東の価格よりも低く、もし消費者がSUNINGの価格は京東の価格より高いと判断した場合、直ちに価格を調整し、発見した消費者に2倍の差を払えます。翌日の9:00から、SUNINGは歴史上最も強力なプロモーションを開始する」と返事した。GUOMEIの副社長何青陽もこの価格競争に参戦し、「2012年8月15日の9:00から、GUOMEIのオンラインストアは京東より5%低くなる」と宣戦布告した。電子商取引最大手、アリババ集団傘下の天猫(もともとは淘宝網の一部で、後来淘宝網と分離し独立した。)も1000万元を投じてパソコンの値下げに踏み切った。当当網、易迅網などのネット通販会社も次々と参戦した。しかし、2012年8月15日、Yitaoから提供されたサードパーティの「戦後情報」によると、6つの主要なEコマース企業のうちの11万7000以上の家電製品の中で、5000アイテムのみが値下げし、約4.2%を占めた。京東の挑発によりはじまたこの価格戦はマーケティング詐欺と指摘された。
中国のネット通販会社の価格競争の激しさにより、日本の楽天は進出からわずか1年半で撤退に追い込まれた 。2019年4月18日、アマゾンも中国市場進出15年以来、kindleとクロスボーダーEC 二つの業務を中国市場に残し、ほかの業務はすべて撤退すると報道された。
3.1.4 発展初期日中のネット通販における商業基盤環境の差
日中のネット通販が本格的に発展する前に、商業基盤環境は大きな違いが存在した。日本におけるネット通販が発展しはじめたのは90年代後半、Windows95が発売され、一般家庭にインターネットが急速に普及し始めたということをきっかけとして、家電量販店や大手メーカーなどが次々と通販に参入した。そして、第三章が述べたとおりに、ネット通販は黎明期、第一次成長期、第二成長期を経って、今の成熟期にたどり着いた。しかし、日本のネット通販が本格的に普及する前に、日本の通販は100年以上の歴史を経歴した。
日本の通販の歴史を考察すると、最初の通販は、1876年に農学者の津田仙が、『農業雑誌』(学農社雑誌局発行)で植物の種を販売したことと認定され、その最初の通販商品は「トウモロコシの種」である。そして、開花期を迎え、1900年〜1910年頃には、百貨店による本格的な通販カタログを発売はじめ、最新情報が掲載されていたため、広く伝わされていた。だから、百貨店だけでなく出版社、種苗業者、製茶業者なども通販を開始し、当時に専門的な通販専門企業もあらわれた。当時は通販カタログのはやりによって、通販の市場は確実に拡大していた。第二次世界大戦により、通販市場は一度終息したが、戦後の復興と高度経済成長を遂げた1950年代〜1960年代は、その後の本格的な通販時代に向けて動きはじめた。1970年代に入ると、ニッセンが通販を開始し、ルームランナーも登場し、企業が次々と通販に参入し、いまは代表的な通販企業になった。
しかし、通販の利用者が拡大する中、消費者が慣れていないということを狙い、悪質業者などが現れ、消費者トラブルも問題化した。この時期において、百科事典の強引な訪問販売が問題(ブリタニカ事件)となり、無店舗販売によるトラブルが急増した。こうしたトラブルを防止するために、1972年にクーリング・オフ制度(割賦販売法改正による)が導入された。本来、契約が成立すると一方的に破棄することはできない。しかし、クーリング・オフとは、上記のような訪問販売など不意打ちによる勧誘で契約をした場合、頭を冷やして冷静に考え直す時間を消費者に与え、一定期間内であれば無条件で契約を解除することができる制度である。これにより訪問販売で、かつ割賦販売(販売業者と消費者の間の分割払い)契約の場合、4日間(現在は8日間)は消費者から一方的に契約を解除することができるようになった。そして、1974年、通商産業省(現、経済産業省)の産業構造審議会は消費者トラブルが多発していた訪問販売や通信販売などに対する規制の答申を発表した。1976年に「訪問販売等に関する法律(現、特定商取引法)」を制定し、通販広告などへ規制をかけた。
1980年代に入ると、ファンケルやオルビス、ふくや、財宝など、特定のカテゴリーに特化した通販会社が台頭した。総合通販や百貨店、テレビ通販といった既存のプレーヤーの事業拡大も相まって、通販の市場は一気に拡大していく。ついに、カタログ通販が1990年代前半に最盛期を迎えた。つまり、日本のネット通販発展が開始する前に、通販は時代の発展とともにながい時間を経ち成長し、ネット通販の発展に良好な商業基盤環境を整えた。
しかし、日本と違って、中国にはカタログ通販の歴史が存在しない。1992年、広東省の珠江水路が中国本土での最初のショッピングショーを放送した。いまは、ネット通販の衝撃でテレビ通販は中国にほとんど消えた。中国における通販の歴史がが短く、わずか20年ぐらいである。しかも、ネット通販を導入する90年代に、伝統的な小売業がすでにひどい商業信頼問題が存在していて、不良品・偽物氾濫もその時から始まる。企業の信頼欠如が解決されないまま、中国の企業家が米国からネット通販を導入した。そのため、ネット通販と発展する同時に、信頼問題がますますひどくなった。
つまり、伝統的な小売業に存在している商業信頼問題が解決されないままネット通販が導入され、中国のネット通販の発展初期に良好な商業基盤環境が築けなかった。ネットの仮想性により、不良品や偽造品の製造・販売に新たなプラットフォームに提供し、もともとが存在している商業信頼問題が一層顕在化している。
3.2 アフターサービスへの懸念における相違点
中国の消費者はネットショッピングを利用する際に不良品や偽物を買ったら、返品することが難しい。反対に、日本の消費者はこういう問題が存在していない。
3.2.1 消費者権利保護に関連する日中機関の職能の違い
中国において、もっとも消費者の権利保護に関連する機関は消費者協会である。中国の消費者協会は消費者の苦情を受け入れ、苦情を調査して調停するという職能がある。しかし、消費者協会が調停しても、大部分のネット通販業者は恐れず、品質がある商品を売っていると認めなく、消費者の損害を賠償しない。もとひどいのは、一部のネット通販業者は「これは消費者の詐欺、嘘、自分が被害者。消費者が賠償しべき」と言い張る。こういう状況になると、中国消費者協会は何にもできない、せいぜい損を被る消費者を支援し訴訟を提起する。マスメディアを利用して、消費者の利益に損を与えたネット通販業者の情報を大衆に披露する。
相対的に、日本の消費者権益を守る機関の消費者庁は悪質商法などに対応して、特定商取引法などの法律を厳正に執行するという職能がある。たとえば、中国の双十一の日に、ネット通販業者が価格の二重設定という消費者の権利を損する行為が多発している。中国の消費者が消費者協会に相談しても、解決できない可能性が高い。しかし、日本の場合、通常の価格とセール価格を二重に表示するという行為は有利誤認表示に該当し、景品表示法違反となった。消費者庁は価格を二重設定したネット通販業者に対し今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずることができる。
3.2.2 中国が日本より権益を守るコストが高い
消費者協会に助けを求めても、ネット通販業者との紛争が解決できないケースが多いので、このとき訴訟を提起するのはよく普通な解決手段である。しかし、中国の場合、ネット通販トラブルに関する訴訟コストが高すぎる。通常、ネットショッピングで消費者が購入する商品の価格はそれほど大きくならないので、訴訟の額も少ない。ただし、訴訟を提起するとき証拠が必要である。たとえば、消費者がネットで偽造品を買ったら、本物の製品の専門店に行って、その偽造品が確かに偽造品ということを検定する必要があり、その検定料も消費者自身で支払う。ほとんどの場合、検定料は消費者が買った商品より高い。しかも、一部の専門店は個人に向けて検定サービスを提供しない。
また、中国の「訴訟法」では「原告が訴訟を提供したいなら、被告がいる裁判管轄において提起しべき」という原則があり、つまり、消費者は通常、訴訟を起こすために被告の事業者の所在地に行く必要がある。一般的に、消費者とネット通販業者の所在地が同じなところにいる確率はきわめて低い。だから、その少額な訴訟費用を除いて、消費者も運賃、宿泊費、弁護士費用などを負担する必要がある。ちなみに、消費者はよくどの機関に訴訟に提起しべきかわからない。
これらの明示的なコストに加えて、消費者にとって多くの隠れたコストも消費し、たとえば、時間コストなど。ネットショッピングの消費者が権利保護を求めて訴えるには、通常数カ月から1年がかかるり、この期間中に場外での調整、法廷審問、証拠の交換だけでなく、大量な時間を失う。たとえ消費者が最後に勝利したとしても、多大な精神的圧力を負う必要がある。しかし、こういう大量な時間と強い精神力を持つ人が多くない。
反対に、日本の場合、消費者が自身の権益を守るコストが高くない。ネット通販トラブルに対し「少額訴訟制度」がある。少額訴訟は、手続きを簡素化させる。そして、裁判が原則1回の審理で終わって、審理終了後その日のうちに判決をもらえる。利用者に経済的な負担がなるべくかからないようになっている。費用も必要な法律の専門家の助けをできるだけ必要としないように工夫されている。
3.3 配送問題における相違点
日中におけるネット通販の商品配送方式は、自社配送と第三者宅便会社委託配送の二つに分けられる。自社配送とは、資金を投入して、各地で物流拠点を建設し、自社に属する配送員手配により、配送業務を展開する。第三者宅便会社委託配送とは、Eコマースプラットフォームに出店している経営者たちは、ネット通販を展開する場合、既存店舗を依存し、配送業務を展開する。たとえば、中国の淘宝網は第三者宅便会社委託配送だけを用いている。日本の楽天、アマゾンと中国の京東は二つの商品配送方式ともに用いている。
中国において、電子商取引の発展とともに、中国の配達業界は飛躍的な成長をとげた。国家郵便局のデータによると、2017年の配達の取扱件数は前年比28%増の400億6,000万個で、売上高は前年同期比で24.7%増の4,957億元に達した。配達市場の規模が年々成長しているが、配達業界は依然として成熟していない。だからこそ、配達サービスや商品の配送時間の長さなどがずっと顧客のクレーム理由となっている。しかし、配送問題は中国のネット通販における特有の安全性問題であり、日本にはそういう問題が存在しない。その理由は本節で分析する。
3.3.1 配送運営形態の違い
中国の宅配会社は主に二つの運営形態が存在している。ひとつはフランチャイズ方式、もうひとつは直営方式。フランスチャイズ方式とは、宅配便会社の本社が自己商号を使用する権利加盟店に提供することにより、本社と同じのブランドで営業を行わせる方式である。中国の申通、園通、中通、匯通、韵達の5社は代表的な企業である。フランスチャイズ方式のため、荷物情報の管理は地域別により管理している。これは荷物の紛失の確率を大いに上がる。そして、フランスチャイズ方式のため、本社だけが資本金を持ち、加盟する店が資本金が持っていない。これは申通、園通みたいな宅配会社の求人情報からみると、配送車両を持参するという条件で配送員を募集することが普通である。最後の配送段階で、配送員は自分の電動自転車、バイク(後の座席に大きな蓋がない商品入り箱をつける)あるいは三輪車で商品を配送することが一般である。だから、最後の配送段階における商品破損、商品紛失のケースがよく起こる。また、こういう宅便会社の大部分は自動仕分け機を持っていなく、荷物を仕分けするときに人工を頼る。これは配送時間を延長するひとつ大事な原因である。
直営方式とは、本社が自社の資金で自社の宅配システムを構築し管理する運営形態である。順豊は代表的な企業である。直営方式のため、十分な資本金が持っていて、配送員に統一の車を配置することができる。最後の配送段階が多発する商品の紛失や破損の確率を下げられる。また、順豊現在は自動仕分け機を配備し、荷物を仕分けする効率が上がり、配送時間を大いに縮小した。そして、荷物情報は本社より集中管理していて、荷物の紛失などの問題が発生する確率はほかの宅便会社より低い。顧客のクレームに対応できるように問い合わせセンターも設置されている。だから、順豊は中国国内の一番評価がいい宅配会社である。スピードはほかの宅配会社よりはやくて、クレーム率も中国政府の定めたクレーム率より低い。
順豊の運賃は申通、園通などのフランスチャイズ方式で経営している宅配会社より高い。省内の場合、順豊の基本料金は12元からはじめ、申通、園通などの配送会社は5~8元からはじめる。省外の場合、順豊の基本料金は22元からはじめ、申通、園通などの配送会社は10~20元からはじめる。そして、一部のフランスチャイズ方式で経営している宅配会社は統一の標準がなく、配送員と交渉できる。淘宝網に出店しているネット通販業者はコストをさげるために、順豊みたいな直営方式で経営している宅配会社を選択しない。2012年の中国宅配便における取扱個数の比率は直営方式が35%で、フランスチャイズ方式が65%である。
しかし、日本の宅配業界のトップクラスにある二つの宅配会社ヤマトと佐川急便、どっちでも直営方式で、資本金が足りているため、配送員に統一の車を配置されている。両社の運賃も大きな差がない。例えば東京から宮城県(南東北)まで荷物を送る場合。
基本料金 |
佐川急便 |
ヤマト |
60サイズ(60cm以内2kgまで) |
756円 |
756円 |
80サイズ(80cm以内5kgまで) |
1026円 |
972円 |
100サイズ(100cm以内10kgまで) |
1296円 |
1,188円 |
120サイズ(120cm以内15kgまで) |
|
1,404円 |
140サイズ(140cm以内20kgまで) |
1566円
|
1,620円 |
160サイズ(160cm以内25kgまで) |
1836円 |
1,836円 |
表2:佐川急便とヤマトの基本料金の比較
出典:https://ecoeco-taizen.com/cut/22042.htmlより作成
そして、佐川急便でも、ヤマトでも自動仕分け機を配備していて、配送時間が長くない。
3.3.2 日中の宅便会社の福礼厚生制度の差
CBNDataとスニンディエンチーが共同で発表した「2018年配達員のインサイトレポート」(2018快递员群体洞察报告)により、中国の配達員の平均月収は6200元である。配達員の給料主に基本給、歩合給と手当という3部分に分けられる。一般的に、宅便会社は低基本給、高歩合給と高基本給、低歩合給という二つの配分モデルを採用する。基本給は地域の経済発展レベルの程度によって異なり、一、二級都市の基本給は3,000元以上で、三、四級都市のほとんどは1,500元から2,000元で、郷鎮の基本給は1,000元以下である。基本給がない場合、歩合給は高くなる。
しかし、淘宝網に出店している大部分のネット通販業者は個人業者あるいは中小企業なので、資金が足りない。コストを減少するため、送料が一番やすい宅便会社を選択する。だから、宅便会社は市場シェアを奪うために、人件費を最低限に維持する。配送員が宅配便を1個配送する歩合給約0.5元~1元で、1個を集荷する歩合給は送料の10%である。歩合給も地域の経済発展レベルの程度によって異り、通常の状況下では、経済的に発展した地域の割合が経済的に発展していない地域より高い。そして宅配便の数は6.18、11.11などの電子商取引プラットフォームにより行われた販売促進の日には多いが、普段がそんなに多くない。
日本の配達員の平均月収は中国の配達員よりはるかに高い。日本の配達会社というと、佐川急便とヤマト運輸、この二つの企業は一般的に良く知られている企業である。ここでは、佐川急便とヤマト運輸の配達員の給料について分析する。まず、佐川急便における配達員の月収は基本給、成果給、残業手当、各種手当と4つの部分で構成する。平均的な月収は約26.7万円~50万円で、試用期間中も、約24.3万円~37.2万円となっている。仕事の強度がかなり強いが、佐川急便はその分の給料をちゃんと支払う。そして、佐川急便は年功序列という日本特有の雇用制度があって、配達員の給料が勤続年数、年齢などに応じて賃金を上昇する。ヤマト運輸は月給15万円以上+歩合給が基本である。宅配ドライバーの平均月収は30万円~58.3万円で、多くの人の平均月収は41.7万円である。こう考えると、日中の配達員の給料の差はとっても大きい。しかし、これは日本と中国の物価水準と労働力需要の差から来ている問題なので、中国の配送員たちに高額な給与を払うことは無理がある。
しかし、日中の宅配会社の福利厚生制度は大きな差が存在する。中国の宅配会社には、燃料補助金、補給、賞与など、さまざまな補助金や福利厚生制度があるが、支払うことができる金額は、会社の関連制度によって異なる。しかし、異なる宅便会社により補助金や福利厚生制度の差が大きい。たとえば、京東の配達員には入社後3か月間の「適応期」があり、この期間内には基本給があるが、期間を過ぎると基本給は無くなる。担当地域は固定され、社会保険5種と住宅積立金に加入できる。「韻達」の場合は初めの1か月のみ基本給があるが、1か月を過ぎると基本給はゼロになって担当地域を持つことになり、社会保険関連は傷害保険だけ加入する。宿泊費と食費は会社持つ。配達員の多くが養老保険が加入していないため、退職後の退職金がもらえない。そして、11.11や6.18など電子商取引プラットフォームが行う割引の日に、配送速度を確保するため残業はかならず必要なことが、大部分の宅便会社が残業手当を支給しない。中国の宅便会社の福利厚生制度が完備していなく、配送員が安心できる仕事環境が存在しない。
一方、日本の宅配会社は充実な福利厚生制度があるということを自慢している。たとえば、佐川急便の福利厚生が充実していて、社会保険、確定拠出年金、ライフサポートクラブ、医療費の補償や傷病手当金などがある。社員だけではなく、家族の全員にも喜んでいただけるようなイベントやサービスなどを、数多く実施している。
そして、ヤマト運輸も業界でもトップクラスの福利厚生を用意している。扶養手当(配達員が家庭を持ち場合には、最大約10万円の扶養手当)や地域手当を支給する。残業手当があり、交通費(当社規定による)を支給する。賞与は年2回 (総額6.08ヶ月分)支給する。各種社会保険完備(厚生年金・健康保険・雇用保険)、確定拠出型年金制度なども完備している。配送員が安心できるような仕事環境を作った。
3.4 小括
本章は日中におけるネット通販の安全性問題の相違点と相違点を起こす原因について分析した。なぜ日本ではネット通販の安全性問題を解決でき、中国では解決できない原因を明らかにした。孔令建(2016)が述べたように商業基礎環境が構築しなかったまま中国のネット通販が導入され、商業信頼問題が深刻化し、ネット通販を使用する際に実物を確認できないため、粗雑品や偽造品が氾濫していく。商品に関するやらせレビューが進化し、正しいレビューを見つけるのは難しいことである。また、中国の消費者がネット通販を選択する第一の理由は低価のため、各EC会社は価格をめぐる価格競争が白熱化したが、本当に価格を下げた商品がすくなく、マーケティング詐欺といわれた。そして、配送問題について、中国宅配便における取扱の半数以上はフランスチャイズ方式で経営している宅配会社により完成した。こういう会社の管理モードや資金力が問題が存在している。くわえて、中国の配送員はきちんと働いている部分の報酬はかならずもらえるとはいえない。最後、中国の消費者協会は実質的な権利が持っていなく、訴訟コストも高すぎので、消費者の権利を守るには困難である。
中国がネット通販の安全性問題を解決できないのはEC会社だけ、あるいはネット通販事業者だけが起こした問題ではない。EC会社、ネット通販事業者、消費者と関連する機関が一緒に起こして、もう悪性な循環になり、解決するにはきわめて困難なことである。
おわりに
本稿では、既存の文献の整理分析を通じて、日中におけるネット通販の安全性問題とは何か、日中におけるネット通販の安全性問題の相違点と成因を説明する。そして、相違点を起こした原因からどうして中国でネット通販の安全性問題がなかなか解決できなく、日本では解決できるということを明らかにする。
まず、日本でも、中国でも、消費者がネット通販で粗雑品や偽造品などを買ったことがある。しかし、日本の消費者は海外会社からB級品や偽物などを買ってしまい、中国の消費者は海外でも、国内でも不良品や偽造品などを買ってしまう。そして、ネット通販業者が海外製品と明記しても、国内製の可能性が高い。それは、中国が電子商取引を導入するときに、良好な商業基盤環境が構築されなかった。そのため、企業の信頼問題が深刻化し、国内に架空注文とレビュー詐欺という現象が多発している。くわえて、中国の消費者がネット通販を選択する第一の理由は低価価格が好きので、各インターネット通販会社はよく過度な価格競争を行うが、実際は消費者を引き付けるためのマーケティング詐欺と指摘された。価格詐欺問題もこの時からはじまた。
次は、中国国内に顧客のクレームトップの配送員サービス問題は日本国内に存在しなく、それ以外、商品の紛失と誤配送もよく中国の消費者のクレームになった。これは、中国では、フランスチャイズ方式で経営している宅配会社が多く、資金が足りていないため、設備が完備していない。宅便会社の福利厚生制度もまだ不完全で、配送スタッフが安心して働らかせる環境が存在しない。
最後は、中国の消費者の権利を守るために設立した消費者協会は日本の消費者庁と違って、不良なネット通販業者を罰する職能が持っていない。また、中国の消費者が訴訟を提起するコストが日本より高いので、アフターサービスへの懸念は中国で消費者に注目している問題となった。つまり、中国におけるネット通販の安全性問題は単に企業の不信行為によるものではなく、消費者や政府にも問題を起こした一因になった。中国がどうやってネット通販の安全性問題を改善しべきか、これは今後の課題にしたい。
参考文献
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[2]孔令建(2016)「中国におけるインターネット通販の実態と問題点」『神奈川大学アジア・レビュー : アジア研究センター年報』p56-p67
[3]国民生活センター 「インターネット通販の前払いによるトラブルが急増:個人名義の銀行口座への前払いはしない」
[4] 情報処理推進機構セキュリティセンター 「ネット通販サイトにおける脅威と対策方針:近年の脅威やその対策方針、セキュリティ対策ツールの紹介など」
[5] 国民生活センター 「2017 年度の越境消費者相談の概要:越境消費者センター(CCJ)で受け付けた相談から」
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[9]増田悦夫 (2012)「宅配便企業におけるクラウドコンピューティング適用の現状と今後の展望」『流通経済大学流通情報学部紀要』 17(1)p137-p154
[10]張 華(2017)「中国eコマース企業のビジネスモデルに関する研究」『山梨学院大学現代ビジネス研究』(10), p 5- p 16,
[11]湯 志華 磯部 剛彦 (2016)「楽天とアマゾンの成長戦略の比較」http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=KO40003001-00002016
[12]顧婧(2009)「中国のインターネット通販市場について」http://hdl.handle.net/2065/31718
[13]日本経済新聞 「中国ネット通販値下げ競争過熱」2012年4 月30 日
[14]金春姫古川一郎施卓敏(2010) 「中国市場における面子と消費者行動に関する考察~既存文献のレビューに基づいて~」『成城大学経済研究』 (188) P159-P175
[15]鈴木雄高(2012)「インターネット通販における消費者の生活環境と購買行動に関する研究」, p31- p 46.
[16]于 秋红(2016)「我国快递业法律制度实施问题与对策研究」http://www.docin.com/p-1896730612.html
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[18]川端俊介下左近多喜男(2005)「電子商取引の発展要素に関する研究」『生産管理』11(2), P221-P226
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[20]郭 志光(2012)「 电子商务环境下的信用机制研究」
http://www.docin.com/p-749342451.html
[21]王 娜 (2009)「基于我国市场环境下消费者网络购物影响因素分析」http://cdmd.cnki.com.cn/Article/CDMD-10183-2010032700.htm
[22] 卢 中元 (2014)「论B2C、C2C电子商务模式下的消费者权益保护」http://cdmd.cnki.com.cn/Article/CDMD-10414-1014392028.htm
[23]野村総合研究所(2015)「生活者1万人アンケートにみる日本人の価値観・消費行動の変化:第7回目の時系列調査結果ポイント」
[24]宮武 宏輔 (2017) 「日本におけるネット通販物流の構造変化」21(2)『流通経済大学流通情報学部紀要』P281-P288
[25]経済産業省商務情報政策局情報経済課「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備:電子商取引に関する市場調査」
[26]野村総合研究所(2005)『第三の消費スタイル―日本人独自の“利便性消費”を解くマーケティング戦略』 野村総合研究所広報部
[27] 謝 英博(2015)「中国宅配便におけるサービス範囲の拡大及び品質向上のための新たな運営形態に関する研究」http://id.nii.ac.jp/1342/00001267/
参考URL
[1] https://netshop.impress.co.jp/node/4478 (参照2019年6月25日)
[2] 中国产业信息网 http://www.chyxx.com/industry/201708/555065.html (参照2019年6月30日)
[3]http://www.360kuai.com/pc/99c452aca46210417?cota=4&kuai_so=1&tj_url=so_rec&sign=360_57c3bbd1&refer_scene=so_1(参照2019年6月17日)
[4] https://toyokeizai.net/articles/-/158973(参照2019年7月19日)