千浦 克之
山川 智也
原田 巧
2010年9月
キーワード
マグロ漁獲規制・第15回ワシントン条約・資源保護・価格動向
要旨
日本人にとってマグロは、とても馴染みの深い食材であり、現在、日本は世界の水揚量の1/4を消費する世界最大のマグロ消費国である。しかし、メディアでは、昨今の世界的な日本食ブームや先進国の健康への意識の高まりなどによって、マグロ資源の存続が危ぶまれていると報道されている。特に今年の3月に「ワシントン条約(CITES)」締約国会議にてクロマグロの禁輸案が議論されるなど、世界的にも注目を集めている。日本はこのような規制強化の流れの中で、マグロの漁獲と消費を先導してきた国として、食生活を守るためにも積極的に資源への具体的対応や意見を提言していく立場にならなければならない。
そもそも、現在、マグロの規制強化の流れは主にクロマグロが対象とされており、最大の消費国である日本に非難が集中しているが、実際、他のマグロ類の動向はどのようになっているのか。また、他の国々の漁獲、消費動向等、疑問に思う箇所は多々ある。本稿では、規制の風潮がある今だからこそ、改めて問題がどこから発生しているのかを明らかにすると共に、規制がかかった場合のシナリオを仮定することで、その影響を実証分析していきたい。
初めに、世界におけるマグロ類の資源動向について、漁獲量、消費量、消費形態の観点から論じる。また、漁獲規制の流れとしての関係性は希薄だが、カツオは海外においてマグロ類同様、缶詰の原料としてあつかわれ、マグロ資料の一部として組み込まれているため、マグロとともにデータを確認していく。次に、先述のように現在話題となっているクロマグロの資源動向、及び規制に対する各国の対応を把握する。そしてシナリオ分析を行う。シナリオ分析については、漁獲量規制時の各流通主体や消費者への価格の影響を日本に限定して分析し、各経済主体の行動を予測、考察していく。あくまでシミュレーションであるため、条件付きの下において分析をする。最後に、全体の総括として、経済的視点から資源としてのマグロの今後と日本との関わりを論じていきたい。
資源としてのマグロと日本の動向
-目次-
目次 ページ
1.はじめに 2
2. 世界におけるマグロ類の資源動向について 3
2-1. 漁獲量推移からみるマグロ・カツオ類資源
2-2. 世界と日本の消費量推移からみるマグロ・カツオ類資源
2-3. 形態別にみる世界と日本の消費動向
2-3-1. 缶詰市場と世界の消費動向
2-3-2. 刺身市場と日本の消費動向
3. クロマグロの資源動向と国際情勢 9
3-1. マグロ資源の管理を行う国際機関
3-2. ワシントン条約について
3-2-1. クロマグロの増大要因とその管理
3-2-2. 第15回ワシントン条約の否決
3-3. その他のマグロ魚種に関する資源動向と規制
3-3-1. キハダマグロ資源の動向と規制について
3-3-2. メバチマグロ資源の動向と規制について
4. シナリオ分析 15
4-1. 分析方法と対象
4-2. 仮定
4-3. 漁獲規制の検証結果の考察
4-3-1. 生鮮クロマグロのケース
4-3-2. 冷凍メバチのケース
5. おわりに 18
参考文献 20
はじめに
日本人にとってマグロは、とても馴染みの深い食材であり、古くは縄文時代の貝塚跡からマグロの骨が出るなど非常に長い関わりを持つ。また、現在、日本は世界の水揚量の1/4を消費する世界最大のマグロ消費国である。しかし、メディアでは、昨今の世界的な日本食ブームや先進国の健康への意識の高まり、またこれまでの乱獲によりマグロの種としての存続が危ぶまれていると報道されている。特に高級魚として知られるクロマグロやミナミマグロは、既存の漁獲量を維持すると危険な状態であると推計されており、今年の3月に「ワシントン条約(CITES)」締約国会議にクロマグロの禁輸案が提案されるなど、世界的にも注目を集めている。日本はこのような規制強化の流れの中、マグロの漁獲と消費を先導してきた国として、積極的に資源への具体的対応や、意見を提言していく立場とならなければならない。
現在、マグロの規制強化の流れはクロマグロが取りざたされており、最大の消費国である日本に非難が集中しているが、実際他のマグロ類の動向はどのようになっているのか、また他の国々の漁獲、消費動向はどうなっているのか等、明確さに欠ける箇所は多くある。本稿では、規制の風潮がある今だからこそ、改めて問題がどこから発生しているのかを明らかにする。そして、もしマグロへ規制がかかり価格が上昇したならば、日本にどのような影響を及ぼすかを実証分析し、今後の日本の対応を考えていきたい。
本稿の構成としては以下の各章で、マグロを取り巻く状況を整理することにより分析していきたい。まず、第2章では世界におけるマグロ類の資源動向について、漁獲量、消費量、消費形態の観点から論じる。また、海外の資料には、一般的にマグロ類の中にカツオが含まれている。これは、海外の主な消費形態が缶詰であり、原料としてカツオもマグロ類の一部として扱われているからだ。よって本稿ではカツオのデータも加え論じていく。第3章では現在話題となっているクロマグロの資源動向、及び規制に対する各国の対応を把握する。これは、第4章のシナリオ分析を行うための基礎情報の整理が必要不可欠なためである。シナリオ分析については、漁獲量規制時の各流通主体や消費者への価格の影響を日本に限定して分析していき、各経済主体の行動を予測、考察していく。あくまでシミュレーションであるため、条件付きの下において分析をする。最後に、第5章では全体の総括として、経済的視点から資源としてのマグロの今後と日本との関わりを論じていきたい。
2. 世界におけるマグロ類の資源動向について
種類によっては、2~3メートルにもなるマグロは、世界中の海で見られる魚の中でも、特に大型になる肉食魚であり、マグロの仲間にはいくつも種類がある。日本の食卓によくのぼる大型のマグロ類に関しては、クロマグロ、ミナミマグロ、キハダ、メバチ、ビンナガなどが挙げられる。本稿では規制の対象として話題のクロマグロと、消費者に身近である赤身商材のメバチ、キハダに主にスポットを当てて論じていく。
このうち、クロマグロとは、マグロ類のなかで最大に成長するマグロで、中トロ、大トロが多くとれる最高級のマグロとして高値で取引される。通常、本マグロと言われるのはこのクロマグロを指す。メバチ(マグロ)とは、刺身や寿司ネタとして、日本では人気のある種である。赤身が多く、手ごろな値段で手に入るため、スーパーマーケットなどでもよく売られている。またキハダ(マグロ)とは、海外でも多く消費され、欧米などでは缶詰として多用されるが、日本では刺身としても消費される。
2-1. 漁獲量推移からみるマグロ・カツオ類資源
次に、現在のマグロ資源を漁獲量、消費量、消費形態の3面から確認し、問題が一体どこから発生しているのかを明確にしていく。
図表2-1. 世界の漁獲量推移

(出所)FAO統計をもとに筆者が作成。
世界のマグロ・カツオ類の漁獲量について、この半世紀での変化をみていこう。1950年代の平均漁獲量は約42万トンであったが、その後50年間で逓増し2008年時点で約436万トンにのぼっている(図表2-1)。また1950年代から2008年にかけての漁獲量は、10.2倍にも拡大し過去50年間で急速にマグロ・カツオ類の漁獲量が増大してきたことが分かる。魚種別に変化をみてみると、カツオ一魚種の漁獲量が突出しており、1950年代平均で約12万トン、2000年代には200万トンにもなる(図表2-1)。その伸びは、全六魚種の中で最も高く16.8倍となっている。他方、マグロ類の推移を見ると1950年代平均で約30万トンであったのに対し2000年代には200万トンとなり、こちらも漁獲量の増加が6.7倍に達している。さらにマグロ類について魚種別に漁獲量の変化をみると、中型のキハダの漁獲が最も多くその増加量は14.5倍とカツオに近い水準で漁獲量が伸びている。その他の魚種に関しては2000年頃まで緩やかに逓増しているメバチ(10.2倍)に対して、ビンナガ(2.2倍)、大型のクロマグロ、ミナミマグロが、それぞれ1.3倍、1.1倍と増加度合いは相対的には低い。
漁獲量の内訳を1950年代、2000年代についてそれぞれ見ると、対象期間を通してカツオの漁獲量が圧倒的に多く、1950年代で漁獲量全体の約30%を占めている。その後、その割合は逓増し2000年代には51%とマグロ・カツオ類漁獲の半数を占める(図表2-2,2-3)。他方、マグロ類は、キハダがその割合を10%ポイントの伸ばしたのに対し、メバチが同水準、大型のマグロ(ミナミマグロ、クロマグロ)は、わずか3%と割合が減少している。
図表2-2. 世界の魚種別漁獲推移

(出所)水産庁HPをもとに筆者作成
図表2-3. 世界の魚種別漁獲量総計(1950-2008)


(出所)FAO統計をもとに筆者が作成。
国別漁獲量に関しては、1960年代前から日本が世界最大の生産国であるが、日本の漁獲は、大きな増減はなく比較的安定しており、1984年(約78万トン)の最高値を記録した後、徐々に減少し2004年は約52万トンとなった(宮部・本多(2007))。一方、主要漁業国のうち米国、仏等の先進国の漁獲量が、ここ10年間で減少傾向にあるのに対し、インドネシアやフィリピン、台湾等のエマージング諸国での漁獲量の増加が堅調なのに加え、上位8ヵ国以外の漁獲量も急速に伸びてきていることも特徴的である。
図表2-4. 世界の国別漁獲量の推移

(出所) 宮部・本多(2007)から抜粋。
2-2. 世界と日本の消費量推移からみるマグロ・カツオ類資源
続いて、漁獲量が増加してきたマグロ・カツオ類(またはマグロ類)がどこでどのような形態で消費されているのかを考察する。
図表2-5. マグロ・カツオ類消費量推

(出所)FAO統計、漁業・養殖累年生産統計、財務省貿易統計の数値もとに筆者が作成。
日本は世界最大のマグロ・カツオ類消費国であり、2006年時点では世界の消費のうちマグロ・カツオ類に関しては19.4%、マグロ類に関しては25.3%を消費している。日本の消費量は長期的に安定して推移している一方で、世界の消費量は増加しており、日本の消費比率は、減少傾向にある(図表2-5)。他方で日本を除いた他国消費総計は過去20年で増大している。具体的には、1988年にマグロ・カツオ類、マグロ類ともに60%台であったが、2006年時点でマグロ・カツオ類に関しては80.6%、マグロ類では74.7%とそれぞれ10%ポイント前後、その比率を伸ばしている。
さらに、世界の漁獲量の増加に対し日本の漁獲、消費がどの程度寄与しているのかを検証するため、寄与度分析をすると、マグロ・カツオ六魚種、マグロ五魚種ともに世界漁獲量増減率は高い増加率を示している。日本漁獲量、日本消費増減率は、日本漁獲量の1.18%ポイント(1996-2000年)、3.72%ポイント(1992-1994年)を除き1%未満およびマイナスの値をとっており、世界の増加トレンドとは一線を画していることがわかる。
すなわち、日本のマグロ・カツオ類漁獲量・消費量は、世界トップシェアではあるものの、近年の傾向としては共に横ばいおよび減少傾向にある。その一方で、世界の漁獲量は伸びおり、日本以外のマグロ・カツオ類に対する需要が増大してきたと推測される。
図表2-6. 世界漁獲量に対する日本漁獲量・消費量の寄与度
期間(3年) |
|
増減量(前期間比) |
|
世界漁獲(%point) |
日本漁獲量(%point) |
日本消費量(%point) |
1992-1994 |
11.08 |
0.80 |
3.72 |
1995-1997 |
3.10 |
▲1.73 |
▲0.16 |
1996-2000 |
10.86 |
1.18 |
0.55 |
2001-2003 |
9.85 |
▲1.97 |
▲0.05 |
2004-2006 |
5.31 |
0.20 |
0.69 |
(出所)FAO統計をもとに筆者が作成
2-3. 形態別にみる世界と日本の消費動向
2-3-1. 缶詰市場と世界の消費動向
世界のマグロ・カツオ類の主な消費形態は缶詰であり、その原料としては中型以下のマグロ類であるキハダ、メバチ、ビンナガ、そしてカツオが多用される。また、魚種別漁獲量の推移に関する資料によれば、マグロ・カツオ類漁獲量の増加は、缶詰の原料となるカツオおよび中型のマグロ二種の漁獲量の増加によるものである。この2点から、増加した漁獲量は、最大の消費国である日本以外で消費されていることが予想されるが、ここでは、世界の主な消費形態である缶詰の生産量の推移をみていく。
川本(2006)では、世界のマグロ類消費動向について分析している。これによると日本の消費形態は刺身がかなりの部分を占めるのに対し、世界の消費は缶詰が主体である。世界の漁獲量のうち缶詰として消費される割合は、1976年から2004年にかけて48%から63%へと増加していると推定している。実際の漁獲量で比較した場合1976年時点で53万トンが缶詰として消費されていたのに対し、2004年時点では262万トンが缶詰として消費されており、28年間で世界の缶詰消費は約5倍に膨れ上がったこととなる。
図表2-7. 世界のマグロ類の漁獲量と缶詰加工量

(出所)宮部・本多(2007)から抜粋。
2-3-2. 刺身市場と日本の消費動向
日本は世界一のマグロ・カツオ消費大国であるが、とくにマグロ類に限ると世界の需要の約1/4を日本が占めている。川本(2006)によると、マグロ・カツオ類の主な消費形態の内訳は、刺身が52%、カツオ節が24%、缶詰が10%となっている。冨岡(2009)によると2007年の日本のマグロ消費合計は38.1万トンである。魚種別に見てみるとメバチが18.2万トンと全体の48%を占め、ついでキハダ(24%)、ビンナガ(13%)、クロマグロ(12%)、ミナミマグロ(3%)となっている。このうち刺身として消費されるのはビンナガを除く4種である。
マグロ類に限るとそのかなりの部分が刺身として消費されており、缶詰により消費が主である日本以外の国とは消費形態が全く異なる。刺身は大きく二分され、メバチとキハダが「赤身商材」、クロマグロ、ミナミマグロは、高級な「脂身商材(トロ)」と一般的に呼ばれている。日本国内の刺身消費の約80%が小売店を通した家庭での消費であり、マグロのうち、主な商材はメバチとキハダである。小売であるスーパーにとってマグロは、水産部門の10%を超え、小売マージン率(=1-仲卸価格/小売価格)が46%という魅力的な商品であるという。
また、世界においては缶詰消費が主であるが、昨今の健康ブームや日本食・寿司の人気の上昇から欧米においても刺身、寿司の消費が急速に拡大している。アジアにおいては、中国、韓国、台湾の消費が着実に伸びている。特に米国(3~5万トン)、韓国(1.5〜2万トン)を筆頭に合計で約6〜9万トン規模の生鮮マグロ類市場があると推計されている(宮部・本多(2008))。
ここまで、マグロ・カツオ類の資源について漁獲量と消費量の推移を幾つかの視点から辿ってきた。結果、過去50年で急速に増加してきたマグロ・カツオ類の漁獲量は、主にカツオおよび中型二魚種(メバチ、キハダ)の漁獲量の増大が要因と考えられる。すなわち、漁獲量の推移をマグロ・カツオ類全体で見た場合、昨今、ワシントン条約における禁輸案の否決や日本が導入する漁獲規制の対象となっているクロマグロは、マグロ・カツオ類全体の漁獲量の増加の主だった要因とは考えにくい。つまり規制対象としたところで、その効果は必ずしも大きくないが、日本にとっては規制されることの影響は大きいだろう。また漁獲量の拡大は主にアジアを中心とした海外要因が強く、日本は確かに漁獲の中心地であるが、漁獲量「増大」の直接の要因とは言い難い。消費についても同様に、日本の消費が安定的であるのに対して、世界の消費需要が伸びそのシェアを拡大させていることが見受けられる。そしてその消費形態として世界の缶詰市場の大幅な拡大が挙げられる。日本の市場については刺身としての消費が半数以上を占め、中でも世界での漁獲量拡大が激しいメバチの割合が高く、メバチに規制がかかった場合の日本への打撃はかなり大きいと言える。
3. クロマグロの資源動向と国際情勢
ここでは、規制の決定を行うマグロ・カツオ資源の管理機関、またそれらを取り巻く国際情勢について言及する。特に、昨今、取沙汰されているワシントン条約締約国会議に提出されたクロマグロの輸出禁止の提案ついての関係、現在のクロマグロ及びその他のマグロ類の養殖、そして規制に関する現状と今後の動向を整理し、ここまでの考察を踏まえたうえで今後の予測を立て、次章のシナリオ分析に繋げていく。
3-1. マグロ資源の管理を行う国際機関
マグロについては、世界の海域ごとにマグロの資源管理を目的とした5つの国際条約機関があり、それぞれの機関が科学的な資源評価を行なって資源管理のためのルールを定めている。例えば、海域ごとに各国が獲ってよいマグロの量や大きさ、漁期などを魚種ごとに定め、さらに、マグロを獲ってよい漁船や、操業することが許された蓄養場を登録し、登録されていない漁船や蓄養場、ルールを守らない漁船や国からの輸入を制限するための勧告も行なっている。しかし、今なおルールを無視した違法な漁業や、過剰な漁獲を行う国もいることから、機関として機能していないと非難する人もいる。後に説明するクロマグロの減少もICCATの管理不足が一つの要因だと考えられている。そして、この問題は第15回「ワシントン条約(CITES)」締約国会議に議論の場を移した。
図表3-1. 機関名と管理水域
機関名 |
管理水域 |
大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT) |
大西洋、地中海 |
インド洋マグロ類委員会(IOTC) |
インド洋 |
全米熱帯マグロ類委員会(IATTC) |
東部太平洋 |
中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC) |
西部太平洋 |
ミナミマグロ保存委員会(CCSBT) |
ミナミマグロ生息域 |
(出所)WWFのHP。
3-2. ワシントン条約について
ワシントン条約とは正式名称、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES: Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)」であり、貿易規制による野生動物の絶滅危惧種の保護を目的としている。2009年8月時点で、世界175カ国が加盟している。本条約の主たる規制内容は、図表3-2の通りである。そして今回付属書Ⅰにクロマグロを入れ、漁獲および輸出入を禁止するのかどうかが議論の中心となった。
図表3-2. ワシントン条約の主な規制
|
「付属書Ⅰ」 |
「付属書Ⅱ」 |
対象 |
絶滅を危惧され、取引により影響を受けるとされる種
|
現時点においては必ずしも絶滅の恐れはないが取引を厳重に規制しなければ、絶滅の恐れがあるとされる種 |
規制内容 |
規制内容:商業目的の国際取引及び公開での漁獲物の水揚げの禁止(学術目的の取引に関しても厳重に管理され、科学的助言に基づく輸入国及び輸出国当局発給の許可用が必要)。 |
商業目的の国際照り引き及び公海での漁獲物の水揚げも可能(科学的助言に基づく輸出国当局発給の許可用が必要)。 |
(出所)経済産業省HPをもとに筆者が作成。
3-2-1. クロマグロの増大要因とその管理
現在、世界全体のクロマグロ漁獲量は約5万5千トン(2007年)である。海洋別でみると、太平洋の漁獲量が約2万トン、大西洋漁獲量は約3万5千トン、大西洋での漁獲が64%に上る(2007年実績:水産庁による)。しかし、昨今の漁獲過剰によりこの大西洋クロマグロの資源枯渇が叫ばれている中、WWFによると世界のクロマグロ供給のうち、その約8割が日本で消費されている。
図表3-3. クロマグロ海域別供給量及び金額(2008年)

(抜粋) ワシントン条約におけるクロマグロ問題と魚食(宮原正典(2008))
ところで、そもそも大西洋クロマグロ資源が減少してきた主因は、地中海沿岸の漁業国が、規制量を越えた過剰な漁獲をしてきた(そしてその一部を日本が消費してきた)ことにある。大西洋・地中海のクロマグロは、国際機関のICCATにより、資源と漁業の管理が行なわれ、「持続可能な資源利用のレベル」である漁獲努力量が決められていた。しかし、実際は、ICCATの加盟諸国が、ICCATの示す漁獲枠を越えて、クロマグロを獲り続けてきたため、地中海・大西洋クロマグロの漁業管理と、持続可能な資源利用を推進する主体であるはずのICCATは、事実上その効力を失ってしまった。
漁獲過剰が行われてきた背景として、養殖技術の発達(供給サイドの要因)が挙げられる。1990年代初頭から天然マグロを生簀で養殖し脂分をのせる蓄養という手法が開発された。その後、オーストラリアにおけるミナミマグロ養殖でこの技術が確立され、地中海でも導入された。その結果、養殖用に漁獲される比較的小型のクロマグロの漁獲量が増大し、地中海のクロマグロ供給量の急速な拡大へと繋がり、資源にとって大きな負担となっている(図表3-4、3-5)。そして前述したように、これら大西洋クロマグロのほとんどが日本向けに輸出されている(需要サイドの要因)。日本は、その急速に増大した漁獲の消費国として、ICCATの漁獲管理の不備を発生させ、大西洋クロマグロ資源の危惧を生じさせた主因であるとされた。この一連の経緯を受けて、大西洋クロマグロに関して、その輸出禁止することを目的とし2010年3月18日にカタール・ドーハにて行われた締約国会議において、付属書Ⅰへの掲載が、モナコより提案された。
図表3-4. 日本の蓄養クロマグロ輸入量推移

図表3-5. 国別養殖クロマグロ生産量(地中海沿岸諸国)

(出所)水産庁資料より筆者が作成。
3-2-2. 第15回ワシントン条約の否決
ドーハ会議において、欧米をはじめとし主要な国際勢力は賛成を表明していた。一方、世界一の水産物消費国である日本は、モナコ案が可決された場合、他のマグロ魚種や水産資源への規制強化を恐れたため大西洋クロマグロの付属書Ⅰへの記載には、強く反対の立場を表明していた。また、環境保護に積極的な姿勢を示しているオーストラリアもミナミマグロの最大漁獲国であることから自国の漁業産業の保護のため反対の立場を取った。結果は、賛成20票、反対72票と大西洋クロマグロの輸出禁止案は否決された。このように、各国が貿易規制による経済的損失が大きい判断したため、今回のモナコ案は予想に反し否決された。また、各海洋を統治する機関が定める規制が十分に機能していないという問題はあるが、ICCATに関しても漁獲規制、管理強化の姿勢を打ち出しており、資源保全を目的とする面では、ICCATとワシントン条約に違いはない。
3-3. その他のマグロ魚種に関する資源動向と規制
前節では、現在規制に関する話題の中心でありメディアでも大きく取り上げられているクロマグロの資源と規制の流れをみてきた。本節では、その他のマグロ魚種のうち日本の消費の大半を占めるキハダとメバチについてその資源動向と規制について纏める。
3-3-1. キハダマグロ資源の動向と規制について
キハダはマグロ類の中で最も漁獲量が多く、また、その漁獲量も過去50年で約13倍と大きく伸びてきた。2008年の世界全体での漁獲量は116万トンとマグロ類漁獲の62%を占める。キハダの漁獲量を地域別に見ると、ここ最近の5年間でインド洋を除いた四海洋において増加傾向にある。そもそも、インド洋域での漁獲に関しても2003年から2006年にかけて巻き網、はえ縄、小規模漁業の発達によりキハダの漁獲量増加傾向にある。水産総合研究センターの調査によると、その要因として4年間にわたる大量漁獲の影響、またソマリア沖海賊問題によるEU諸国の操業の自粛により漁獲量減少がしたと考えられる。
こうしたキハダの漁獲量増加を懸念した各地域の対策として、主に科学的根拠に基づく調査の結果を考慮して期限を定め、一部海域もしくは、全海域の漁業を禁止する顕著な動きがあるが、その他の規制は各地域によって異なる。
図表3-6. 各地域の管理・関係機関及び規制の内容
地域 |
管理・関係機関 |
規制の内容 |
東部太平洋 |
IATTC |
巻き網漁業の全面禁止(2010年は62日間)
部分的領域(西経96度以西など4か所で1カ月) |
中西部太平洋 |
WCPFC |
(A)集魚装置を用いた操業の3カ月間禁止
(B)島嶼国に囲まれた4つの公海(ポケット公海)禁輸
(C)100%オブザーバー乗船 |
インド洋 |
IOTC |
特になし(規制に必要な評価を調査中) |
大西洋 |
ICCAT |
2004年からギリシア湾の一部海区における11月中の表層漁業の操業禁止 |
(出所)水産総合研究センターHPをもとに筆者が作成。
3-3-2. メバチマグロ資源の動向と規制について
メバチは、2008年時点でマグロ類漁獲の22%を占めキハダに次いで漁獲量が多い魚種である。その漁獲量は、1990年代半ばまでゆるやかに逓増してきたが、その後は横ばいまたは減少傾向にある。
メバチ漁獲量もキハダ同様、ここ最近の5年間でインド洋を除き増加傾向にある。インド洋メバチの漁獲量は1999年のピーク(15,1万トン)から年々減少し、2008年には10,7万トンと1994年以降過去最低を記録した。その要因として、キハダ同様、大量漁獲の影響やソマリア沖海賊問題によるEU諸国の操業の自粛、また、インド洋域に限らずメバチへの規制はキハダに対する規制よりも厳しく、メバチの資源動向の減少に拍車がかかっていることが推察される。規制に関しては、キハダが巻き網漁業に限定していたのに対して、メバチは巻き網と共にはえ縄漁業に関しても規制する点が大きな特徴だと言える。
赤身商材は主に刺身消費として家計にとって深い関わりがあり、規制された場合トロ商材以上に影響力があると言っても過言ではない。前節までに見てきたように現在の漁獲量、消費量の拡大はメバチ、キハダが主であるため、更なる規制がかかるのは時間の問題である可能性が高いと考えられる。
図表3-7. 各地域の管理・関係機関及び規制の内容
地域 |
管理・関係機関 |
規制の内容 |
東部太平洋 |
IATTC |
巻き網漁業:キハダと同様
はえ縄漁業:2010年は2007年メバチ漁獲枠の5%減。 |
中西部太平洋 |
WCPFC |
巻き網漁業:キハダ同様。
はえ縄漁業:メバチの漁獲量を2001年から2004年
平均値から20%削減。 |
インド洋 |
IOTC |
台湾はえ縄漁獲割当(上限3.5万トン)
巻き網・はえ縄船ログブック最低情報収集の義務など。 |
大西洋 |
ICCAT |
ギニア湾11月の巻き網。竿釣りの全面禁漁
漁獲努力量の凍結および国別漁獲枠の設定など。 |
(出所)水産総合研究センターHPをもとに筆者が作成。
4. シナリオ分析
前章までで論じたように、日本の過大な漁獲や消費に対する批判や、クロマグロが規制の主要対象として取りざたされていることは間違いではないが、本質的な問題解決方法としての論点や対象が必ずしも適切とはいえない。むしろ、課題とすべきは海外におけるマグロ類に対する漁獲と消費の急速な拡大、特に漁獲量が増大しているのはクロマグロなどのトロ商材ではなく、缶詰に多用されるメバチやキハダといった赤身商材である。そこで今回のシナリオ分析では生鮮クロマグロが規制されたパターンと共に、輸入流通の多い冷凍メバチについて分析していきたい。
4-1 分析方法と対象
ここでの分析は規制がかけられた場合の日本全国の産地卸売市場、消費地卸売市場、小売、それぞれの価格に対する影響を見ていく。ここで各市場について簡単に触れておく。産地卸売市場とは生鮮まぐろの大半が通る市場であり、水揚げされたマグロが最初に上場される市場のことである。上場後はその8割が消費地卸売市場に向かう。この市場は卸売業者をもう一人挟むことにより、各小売店へと円滑に分配することを目的とした市場(例えば、代表的な市場は築地市場)である。なお、冷凍マグロは主に輸入により国内に供給されるため、産地卸売市場に行くことはまれであり、消費地卸売市場に買い付け業者を通して直接搬入されるのが大半である。
分析方法は単回帰分析を用いる。被説明変数を価格(P)、説明変数を数量(X)とし、農林水産庁の直近6年分の月別データをプロットし需要曲線を求め検証する。
4-2 仮定
計量経済学の世界では、需要供給と供給曲線の識別は古典的なテーマである。ここで行うような、数量と価格に関する回帰分析では、得られる推定結果は識別不能でモングレルを得ていることとなることは広く知られている。本来は、回帰式を誘導形とするとか、何らかの識別条件を入れることでこの問題を回避するのが標準的である。
しかし、今回の分析では議論を簡略化するために、初期値の供給量を一定とする。この妥当性は、現在漁獲量を直接規制しているWCPFCの規制内容を踏まえてのものである(多少の変動があるため直近6年分の月別データの平均値を用いる)。シミュレートする際の削減率については、現在WCPFCのメバチの漁獲量の規制としては2001年から2004年の漁獲量の平均値から20%削減となっており、さらに規制が強化すると考えられることからここでは漁獲量が50%削減されると仮定する。クロマグロ漁獲の削減率についてはICCATが2010年に40%削減を決めているが、それよりも厳しい50%とする。以上のことを踏まえ、分析を行う。
4-3. 漁獲規制の検証結果・考察
4-3-1 生鮮クロマグロのケース
図表4-1. 規制下における生鮮クロマグロの価格変動

(出所) 農林水産省資料より筆者が作成
供給の平均値は249トンであり、50%削減されると125トンとなる。推定式にこの値を代入して価格を求めてみると、規制前の産地卸売市場価格は3093.91円であり、50%削減を行なった場合は3392.75円と価格は298.84円上昇する。また消費地価格に関しても規制前は3824.63円であったのに対し、規制後は4212.75円と388.75円上昇した。
産地卸売市場の価格が上昇すれば、消費地卸売市場が小売へ販売する価格を上昇できないのであるならば、消費地市場のマージンは減少する。しかし、消費市場価格も388.75円上げる余地があるため、自分たちの利益を維持するため消費地市場も価格を上げるだろう。そうなれば、小売価格も利益確保のために価格を上げなければならないが、刺身商品は消費者ベースの価格形成のため、この仕組みが維持される限りにおいては、そう簡単には価格を上げられない。ここで消費者ベースの価格形成について言及する。前述したように、スーパーなどの小売店においてマグロはマージン率が非常に高い。従って小売店は、安定した収益を確保するため、変動する産地価格を主体とする価格形成から、消費者に受け入れられる固定的な価格水準を実現する小売価格へと、マグロの価格形成大きな転換をもたらした。つまり漁獲量により価格が決定するといった標準的なセオリーとは異なる形で価格が決定される傾向が強まっている。その影響は現在、脂身商材へと波及しつつある。
よって価格上昇によるしわ寄せをどの経済主体が吸収するのかという問題が出てくる。短期的には、小売りは消費者ベースの価格形成かつ安定的な利益を得ることを主張することが予想されるため、消費地卸売市場が価格の上昇を負担すると考えられる。しかし、あくまで短期的な対応でしかなく、マージンを中期的・長期的に維持していくためには、消費地卸売市場も価格上昇を小売に対し要求し、小売もこれに応じる必要に迫られることになるはずである。そのため小売りは、盛り合わせ販売を増やすなどして、単価が高い形で販売してそこからマージンを捻出するなどの対策が求められることとなるだろう。言い換えれば商品に更なる付加価値をつける必要がある。ただ、いずれにしても、最終的には価格上昇の負担は何らかの形で消費者にくることにならざるを得ないだろう。
4-2-2 冷凍メバチのケース
図表4-2. 規制下における冷凍メバチの価格変動

(出所) 農林水産省資料より筆者が作成
冷凍メバチに関しても同様の流れで分析する。ただし、冷凍の場合、生鮮とは違いほとんどが輸入のため産地卸売市場を介さない。そのことを考慮し、分析では消費地卸売市場にのみ焦点をあてた。その結果、生鮮クロマグロ同様、50%の規制により消費地卸売市場価格は128.31円上昇し、その後の小売店への影響もまた同じ結果である。しかしメバチは消費者にとって身近な赤身商材であるため、小売の価格上昇はクロマグロのケースより限定的なものとなるであろう。
5.おわりに
日本人の食生活になじみ深いマグロは近年、世界的な日本食ブームなどによって日本以外の国からの需要も拡大している。その結果、水産資源の減少が世界的に推察され、国際条約による規制を求める議論が度々行われている。その対象として主に高級商材であるクロマグロが挙げられる。しかし、2章でも既述したように魚種別で見ると、キハダ・メバチの漁獲が最も多く伸びており、クロマグロに関してはほぼ増加していない。また、消費量についても増加原因は日本ではなく、海外要因の方が圧倒的であった。そして世界の主な消費形態は缶詰であり、他の国々の漁獲についてもその原料となるカツオやメバチの占める割合が大きく、クロマグロが昨今の水産資源減少の要因としては考えにくいことが明らとなった。むしろキハダやメバチに規制をかけた方がマクロ的に見れば、効果的ということになる。
このように、世界のマグロに対する認識と資源の現状については、必ずしも正しい理解がされていない側面がある。ただし、日本が世界最大のマグロ消費国であることも事実であるから、国際社会の中で日本もこの問題に対して真摯な対応をする必要があるだろう。先にも述べたように、近年のマグロ資源の減少は、世界の需要拡大も考えられることから、日本だけの問題ではない。そこで、日本がマグロ資源保護に関するリーダーシップを取ることが何よりも大切なのではないだろうか。国際的にも発言権を持ち、世界のマグロ資源を包括的に取り組むことにより、資源の安定のみならず自分たちの食生活を守ることも可能となるはずだ。そのためにはまず、新規参入の阻害要因となっている漁業権や漁業許可の固定化といった、日本国内の漁業業界の問題を整備することが不可欠である。農林水産省によると、現状の漁業制度では参入制限や条件を設けており、これによって養殖業者などの新規参入が困難となっている。例えば、マグロの安定的な供給が可能と期待されている完全養殖は、技術的、経済的な問題で現段階では十分な供給を生み出せないが、今後、国の援助などで実用可能になったとしよう。しかし、こうした制度が存置されれば、資源回復への働きが十分機能しない可能性も考えられる。それでは、いくら資源保護の姿勢を打ち出しても意味が無い。つまり、積極的な働きかけによるリーダーシップの獲得が機能しないのだ。そのためにも、漁業業界の根本的な構造改革が必要なのではないだろうか。
また、キハダ・メバチへの規制は昨今、WCPFCの漁獲量規制を元に行われ始めている。多田稔氏の「まぐろ供給モデルの開発と適用事例」によれば、規制がある方が、規制が無い場合に比べて資源回復の割合が高いことを示唆しており、この漁獲量規制には一定の意味がある。そして、今後更に規制が強まるのも時間の問題だろう。そのような状況の中、あくまで仮定の下のシナリオ分析の結果ではあるが、長期的には家計へのマグロ価格の上昇は避けられないと結果がでた。そのため、小売りはいかにうまく付加価値がある商材を提供し、マージンを確保するのかが鍵となってくるだろう。また価格上昇を抑える方法として、卸を通さない流通が増加することが予想され、マグロの流通構造自体に変化がでる可能性もある。米ほどではないにしても、マグロ食は日本の食文化の重要な一要素であり、単なる一食材としてしまうのではなく、官と民が協力してこの問題への対処に向けた取り組みをしていくことが期待される。
<参考文献>
・出村雅晴(2004) 「マグロの流通と価格形成」『農林金融』
・出村雅晴(2008) 「マグロの需給と価格形成をめぐる動向」『農林金融』
・ 上田武司(2003) 『魚河岸マグロ経済学』集英社新書
・ 水産資源研究会(2007)「グローバリズム時代におけるマグロをめぐる漁業・養殖/流通/食」「持続的な水産資源の利用と管理に関する調査及び情報普及・啓発」第二年度報告書
・ 板垣芳男、武本俊彦、栗田郁美(2009)「日本と欧米における漁業政策の動向」農林水産調査室
・ 宮部尚純、本多仁(2007)「まぐろ・かつお類の漁業と資源調査(総説)」
・ 宮部尚純、本多仁(2008)「まぐろ・かつお類の漁業と資源調査(総説)」
・ 馬場徳寿、鈴木治郎(2003) 「まぐろ・かつお類の漁業と資源調査(総説)」
・ 川本太郎(2006)「世界のまぐろ類消費動向ならびにタイ缶詰産業と日本市場との関係」
<参考URL>
・ FAO Fisheries and Aquaculture Department(http://www.fao.org/fishery/en)
・ 政府統計の総合窓口(http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001038613)
・ 農林水産省HP(http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kensaku/bunya6.html)
・ 水産庁HP(http://www.jfa.maff.go.jp/j/tuna/index.html)
・ 統計情報サービス(http://toukei-is.com/h/?p=00701012&f=00&ie=1)
・ WWF HP(http://www.wwf.or.jp/)
我が国への主要まぐろ類の供給額(2008年)は約3,500 億円(生産金額+輸入額)
(出所) 農林水産省「漁業・養殖業生産統計」及び財務省「貿易統計」に基づく推計