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【はじめに】
国民の健康志向の高まりに伴い、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、薬局などには健康や美容を謳った健康志向食品や医薬品が数多く並ぶようになりました。そして、その手軽さからか、健康食品やサプリメントと呼ばれる食品を「利用している」あるいは「利用したことがある」という利用経験者は女子大生の半数以上を占めています(右図)。このように、消費者にとって身近な健康食品ではありますが、いざ購入するとなるとその選択基準はひじょうに難しいことも確かです。錠剤のものもあればドリンク剤もあり、健康茶もあれば食品もあります。表示をみると,「健康食品」、「健康補助食品」、「栄養機能食品」、「特定保健用食品」、「医薬品」など様々です。
はたしてどのような基準で商品を選んだらよいのか、効果は本当にあるのか,安全性はどうなのかなど提供される情報量が少ないだけに,消費者がどのカテゴリーのどの製品を選べばよいのかその判断は非常に難しいと思います。このページでは、このような健康志向食品の種類,安全性,問題点,つきあい方について考えてみます。 
【健康食品の位置づけ】
平成13年4月より,保健機能食品制度が発足し,食品と医薬品の区分の見直しが行われました。右図に示したように,保健機能食品は医薬品と食品の間に位置するものであり,何らかの保健機能が認められる食品です。保健機能食品は,さらに「栄養機能食品」と「特定保健用食品」に分けられており,食品の形態のものと錠剤やカプセルのような医薬品的な形状のものが含まれます。なお,平成17年2月1日に「健康食品」に係る制度の見直しが行われ,現行の特定保健用食品の科学的根拠のレベルに達しない場合でも,一定の有効性が認められる場合は,限定的な科学的根拠である旨を表示することで「条件付き特定保健用食品」として許可されることとなりました。また,これまでの許可件数が100件を超えている成分で,最初の許可から6年間以上経過(健康被害が出ていないもの)し,複数の企業が許可等を取得している成分ついては,個別審査を行うことなく許可される規格基準型特定保健用食品も創設されました。
健康食品は,食品に分類され,医薬品や保健機能食品のような保健機能が保証されるものではありません。 
【健康食品とは】 【健康食品の問題点】
健康食品は,一般には保健・健康増進などの効果を期待させる食品と考えられていますが,現在の日本には健康食品を規定する法律はありません。したがって,強いて定義するとすれば,「普通の食品より健康によいと称して売られている食品」ということになりますが,食品である以上医薬品のように「血圧を下げる」などの効能を表示することはできません。
健康食品には,明確な定義がないため,これを分類することは難しいのですが,これも強いて分類すると,
1 お茶やそばなど一般に健康によいとされる食品
2 清涼飲料水などの食品の形態をしているが,健康増進に役立つ機能性成分が添加されている食品
3 有効成分を抽出・濃縮し,錠剤やカプセルなどの形状をした食品
4 お茶などを錠剤やカプセル剤などの形状にした食品
のようになります。 健康食品は,医薬品のように厚生労働省の認可を受けなければ販売できないというものではないため,「がんが消えた」,「糖尿病が治った」,「簡単に10kgやせた」などと宣伝して高価な健康食品を売りつける業者も見受けられます。「有効な治療薬のない難病に○●キノコ(健康食品)が効果を発揮する」というような宣伝は行き過ぎであるし,そんなに効果の強いものが医薬品として認められないわけがありません。このような宣伝を信じて高価な健康食品を購入し,無用の出費をした上に,適切な治療が遅れ,生命を奪われることさえあるのです。さらに,栄養機能食品の表示を悪用し,許可されていない成分をあたかも許可されているかのように偽装する業者も現れています。
健康被害の報告も多く,腹痛などの消化器障害のほか,甲状腺機能障害,重篤な肝機能障害で入院したり,死亡する事例も発生しています。
健康食品は,「保健・健康増進などの効果を期待させる食品」であるだけに,その有効性については気になるところであるが,その効果が科学的に実証されているものは多くありません。ほとんどの場合,個人の体験談や証言であり,消費者はその話が真実かどうか確かめるすべはありません。
このように問題点の多い健康食品ですが,これを完全に否定することは適切ではないと思います。食品には一次機能(栄養),二次機能(味覚)および三次機能(体調調節)の三つの機能がありますが,そのうちの三次機能については病気の予防などに深く関わっていることが明らかになってきています。したがって,疾病時にはその治療のために医薬品を用いなければなりませんが,生活習慣に起因する「半健康な状態(半病気の状態)」では,食品によって病気への移行を抑え,健康な状態に戻すことは望ましいことです。そういう意味では,「科学的に有効性や安全性が実証された健康食品」が必要となってくると思います。
【健康食品の有効性】
健康食品の有効性を科学的に評価した報告はそんなに多くありません。私の研究室で,健康食品の中でも「糖尿病」や「肥満予防」に効果があるとされる健康茶の糖質消化吸収抑制作用について検討しましたのでご紹介します。
この研究は,各種健康茶による砂糖の消化吸収抑制作用について医薬品であるアカルボース(食後過血糖治療薬)と比較し,いわゆる健康食品と医薬品の有効性の差異を明らかにすることを目的として実施したものです。実験に用いた健康茶は,薬局やインターネット通販などで販売されている健康茶のうち,「糖尿病予防」および「ダイエット」を目的とする説明がなされていたサラシアオブロンガ茶,桑の葉茶,グァバ茶,ギムネマシルベスタ茶,タヒボ茶,バナバ茶,ヤーコン茶などで,パッケージに記載されている方法により熱水にて抽出後,抽出液を濃縮して実験動物に投与し,その効果を医薬品であるアカルボースと比較しました。また,錠剤の形状をしたグァバ葉粒およびギムネマシルベスタ粒についても同様に検討しました。
その結果,有効性を示したものはサラシアオブロンガ茶,桑の葉茶,グァバ茶,桑の葉粒の4品目のみであり,他の健康茶および錠剤の形状のものについては有効性が認められませんでした。また,医薬品1回1錠分に相当する健康茶の摂取量は,サラシアオブロンガ茶で2.2?,桑の葉茶で12?,グァバ茶で24?で,桑の葉粒は24粒でした(右表)。
今回の実験では,糖質の腸管からの吸収を抑制する作用を評価方法であったため,インスリン様物質として働いたり,細胞へのグルコースの取り込みを促進するなどの作用機序で血糖値を下げる場合は有効性が認められない場合もありますが,少なくとも「糖尿病予防」および「ダイエット」を目的とする説明がなされているにもかかわらず,有効性に大きなばらつきがあることが明らかになりました。 
【健康食品とのつきあい方】
健康食品を利用する場合のポイントをいくつかあげてみます(右図)。
まず,品質や安全性がある程度把握できるものを選ぶようにしましょう。同じ成分を含むものでもいくつかのメーカーが製造・販売している場合は,製造あるいは販売メーカーをチェックするか,あるいはJHFA認定マークの有無をチェックするようにしましょう。比較的知名度のあるメーカーが製造・販売している場合は,それなりに責任をもって製造・販売していると考えられますし,また何かトラブルが生じた場合でも「連絡しても会社がなかった」という心配はないでしょう。また,JHFA認定マークは,厚生労働省所管の財団法人である日本健康・栄養食品協会が,健康食品の含有成分,安全性,製造工程,表示内容などの規格基準を設定し,これに合格したものに表示を認めたもので,有効性はともかく,品質や安全性については十分評価できるものです。
次に,健康食品の効果を過度に期待せず,過剰摂取はさけることです。健康食品の効果については,十分に評価されたものではなく,「~に効く」という保証はありません。たとえば,野菜不足を感じた場合,そのすべてを健康食品で補おうとせず,まず食生活を見直し,野菜不足を解消するべきです。健康食品は,それでも十分に解消されない場合の選択肢の一つと考えていただきたいと思います。食品には病気を予防し,健康を維持する成分が含まれており,バランスのとれた食生活が病気の予防につながることを再認識していただきたいと思います。
最後に,疾病時には医薬品の治療を最優先し,健康食品は補助的なものと考えて下さい。健康食品は医薬品に比べ,手軽に入手できることから,疾病の治療に利用している消費者も少なくありません。繰り返しになりますが,健康食品は医薬品と異なり,有効性が保証されたものではないことを十分に認識した上で補助的に利用するようにして下さい。