修士論文
グッピー(Poecilia reticulata)におけるメスの選好性パターンとその進化的意義
正路章子
平成13年度
目次
要旨 ………...3
はじめに ………...4
材料と方法 ………...7
結果 ……….14
考察 ……….16
謝辞 ……….21
引用文献 ……….22
図 Figure. 1.~Figure. 3.
表 Table. 1.~Table. 2.
要旨
配偶者選択において、メスがどのような基準でオスを選んでいるかという問題は、性選択だけでなく種分化の交配前隔離の問題に対しても重要である。しかし、配偶者選択の様式はあまり研究されておらず、その事が配偶者選択研究の進展を妨げていると言われている(Widemo and Saether, 1999)。メスは交配前にオスを探し (サンプリング)その中から配偶者を選ぶ。もし、サンプリング範囲が捕食リスクや繁殖のタイミングのずれなどによって限定されれば、サンプリングされるオス形質の頻度分布は集団のオス形質の頻度分布を反映しない。この時「メスがオスをどうランク分けするか」を決定するpreference functionが、絶対的基準で決まるか相対的規準で決まるかという問題が重要になる。もしサンプリングがかたよった時、preference functionが相対的に決まっていれば、頻度依存的性選択が実現するだろう。頻度依存的性選択は種分化モデルにおいて重要な役割をはたしている事が示されている(Kawata and Yoshimura, 2000)。
今回私は、グッピーを用いて、配偶者選択の様式、特にpreference functionが絶対的基準で決まっているか相対的規準で決まっているか、をWagner(1998)が提案した方法を用いて調べた。メスにオスを1匹見せた場合(絶対的基準)のオス形質値に対するメスの反応値と、オスを2匹見せた場合(相対的基準)のオスの形質値の差に対するメスの反応値の差を調べた。オスを2匹見せた場合にはさらに、片方のオスを一定値に固定する場合(相対的基準Ⅰ)と固定しない場合(相対的基準Ⅱ)を考えた。そして、メスの反応値を訪問回数と一回あたりの滞在時間で調べ、オスの形質値に対するメスの反応値を単回帰、および多項式回帰した。相対的基準Ⅱで、絶対的基準と相対的基準Ⅰよりも、オスの形質に対するメスの一回あたりの滞在時間を回帰した時のあてはまりがよかった。この事は、メスが相対的基準でオスを選んでいる事を示している。
はじめに
メスがどのように配偶者を選択しているかという問題(当然オスが選ぶ場合もあるが、多くはメスが選ぶので、以後メスによる選好性として話を進める)は、1世紀以上にわたって主要な研究テーマであり続けている。配偶者選択が重要視されている理由はまず、配偶者選択が「生存に不利に見えるような極端なオス形質を生じさせる進化的な力」(性選択)(Andersson, 1994)であるという点にある。たとえばFisherのrunawayモデルは、メスの選好性とオス形質の共進化によって極端なオス形質が進化する可能性を示している(Andersson, 1994)。配偶者選択が重要視されているもう一つの理由は、配偶者選択が「集団間にdivergenceを生じさせて繁殖隔離を引き起こす力」(種分化)(Lande, 1981, 1982;Iwasa and Pomiankowski, 1995; Pomiankowski and Iwasa, 1998) だと考えられているからである。たとえば、東アフリカのビクトリア湖に生息するカワスズメ科の魚の種分化には、配偶者選択が重要な役割をになっている可能性が、強く指摘されている(Seehausen et al., 1997; Galis and Metz, 1998)。
しかし配偶者選択の様式(mode)についてはあまり研究されておらず、それについて近年様々に問題提起がなされている。たとえばQvarnstrom and Forsgren(1998)は、「生存に不利に見えるような形質であるために性的に選択されたと考えられていた形質」を持ったオスを選ぶことが、時にメスの適応度を下げてしまうことを示唆した。さらに、二次的な性的形質をもったオスが必ずしもメスに好まれるわけではないという例(Forsgren, 1997)を示した。そして配偶者選択が集団にどのような結果をもたらすかを理解するためには、配偶者選択の様式、特にメスがオスを選ぶ時の手がかりの間の相対的重要性を明確にしなければならないと述べた。またWidemo and Saether(1999)は性選択を決定する様々な要因を分類して、それらが配偶者選択においてになう役割とそれらの相互の関連について考察した。そして、各個体がどのような配偶者選択の様式をもっているか理解しないと配偶者選択研究は進展しないと指摘した。
配偶者選択の様式は大きくchoosinessとpreference functionに分けられる。choosinessとは個体が配偶者を探す時に投資するエネルギーや繁殖努力のことで、交配前に探して調べる配偶者の数(サンプル個体数)や各配偶者を調べるために費やす時間などを指す。一方preference functionとは、各個体が配偶者をランク分けするための基準を指す(Jennions and Petrie, 1997)。特にこの、preference functionの様式については近年研究が増えてきてはいるが、ほとんどわかっていない。
配偶者選択において、配偶者を探す際にどういうサンプリング戦略をとるかという問題は重要である(Janetos, 1980)。なぜなら、繁殖のタイミングが制限されていたり捕食される危険性が存在したりするので、普通メスは集団中のすべてのオスを調べることができないからである(Milinski and Bakker, 1992)。各メスがオスを探す範囲の大きさやオスの分布密度が、メスが交配前にどれだけの数のオスを調べることができたか(サンプル数)に影響を与える。もしオスの空間的な分布が均質でなかったりサンプル数が極端に小さかったりすれば、確率的な要因の影響が大きくなり、サンプリングされるオス形質の頻度分布が集団のオス形質の頻度分布を反映しなくなる可能性がある。
サンプリングされたオス形質が集団全体から見るとかたよっていた場合、配偶者選択の様式におけるpreference functionの問題が重要になってくる。たとえばpreference functionの様式に絶対的基準があるなら、目の前にどういうオスが存在しても特定のオス形質に対するメスの反応は変わらないので、各オスにとっての配偶者選択の結果(オスの繁殖成功)も変わらない。しかし、preference functionの様式が相対的基準で決まっていて、メスが2個体以上のオスを比べて選んでいるなら、サンプリングの問題が配偶者選択の結果を左右するだろう。
メスの選好性が1遺伝子座で決まっていて、優性遺伝子が発現するか劣性遺伝子が発現するかによって、メスが何個体ものオスの中からどのオスを選ぶかという基準が逆転するような、単純な選好性を仮定した種分化モデル(Turner and Burrows, 1995)においては、メスのpreference functionが相対的に決まっていることが形質分化の原因となっている。しかし選好性が複数遺伝子座で決まっている量的形質であると仮定したとしても、preference functionに絶対的基準があるか、相対的基準で決まっているのかという問題は重要になる。なぜなら、サンプリングの範囲が限られてメスのpreference functionの様式が相対的に決まっている時、frequency-dependent sexual selectionが実現されると考えられるからである。これは、局所的なオス形質の頻度分布が、サンプリングとpreference functionを通してメスの配偶者選択の結果を決めるためである。frequency-dependent sexual selectionは種分化モデルにおいて重要な役割をはたしている(Kawata and Yoshimura, 2000)。つまり、preference functionの様式を明らかにし、それが結果としてどのような性選択圧を実現するか予測することは、非常に重要な問題である。
今回私はグッピー(Poecilia reticulata)を用いて、メスのpreference functionが絶対的基準により決定されているのか、相対的に決まっているのか、を調べた。グッピーでは、preference functionの個体間変異がBrooks and Endler(2001a)により詳細に調べられているが、選好性の基準が相対的か絶対的かという問題は考慮されていない。またグッピーは、メスの強い選好性とオスの多様なカラーパターン形質が観察されているにもかかわらず種分化していないことが指摘されている(Houde, 1997; Magurran, 1998)。したがって、種分化に配偶者選択がどのように影響するかという問題について、東アフリカのカワスズメ科の魚とは逆の視点から新たな示唆を与えるかもしれない。
材料と方法
グッピーについて
グッピー(Poecilia reticulata)は南アメリカ産の卵胎生の小型陸水魚で、国内の温泉地や河川への定着も多く報告されている。グッピーは明確な性的2型が見られる事もよく知られている(Houde, 1997)。グッピーのオスは個体識別が可能なほどの多様なカラーパターンを持ち、一方でメスは何の模様もなく地味だが、オスの特定のカラーパターンに対して強い選好性を示すことが知られている(Houde, 1997)。
カラーパターンに対するメスの選好性は非常によく調べられている。特にオレンジカラースポットの明るさに対しては、強い安定したメスの選好性がある事が報告されており、異なるグッピー集団から採集したメスでもオレンジカラースポットの明るさに対しては、同じく明確な選好性を示す事が知られている(Houde, 1997)。
メスの選考性の基準
本研究では、グッピーのメスの選好性がもっとも明確に示されるオレンジカラースポットの明るさを指標に用いて、グッピーのメスが絶対的な基準でオスを選んでいるのか、相対的な基準で選んでいるのかを調べた。
選考性の基準は、Wagner(1998)に従い以下の3つの基準を想定した(Figure 1)。
絶対的基準(Absolute) (Figure 1a):
オス1個体に対するメスの反応を調べ、オスの形質値の大きさの変化に対してメスが何らかの傾向をもった反応値を返すどうかを調べる。オスの形質値の大きさに対してメスが決まった反応を示すという事は、メスがオスの形質の絶対値を判断できるような何らかの絶対的基準を持っていることを示している。
相対的基準Ⅰ(Relative Ⅰ) (Figure 1b):
オス2個体それぞれに対するメスの反応の違いを調べ、オスの形質値の大きさの差が変化するにつれて、メスの反応値も何らかの傾向を示すかどうかを調べる。この時、メスに提示するオス2個体のうち一方は最小の形質値をもつ個体とし、常に同じ値の個体を示す。もう一方の形質値を変化させる事で、オス間の形質値の差を変化させる。
相対的基準Ⅱ(Relative Ⅱ) (Figure 1c):
相対的基準Ⅰと同様に、オス2個体に対するメスの反応の違いを調べる。しかし相対的基準Ⅰと異なり、オス2個体はどちらも固定せずにオス間の形質値の差だけを変化させる。もし絶対的基準でメスの反応に何らかの傾向が観察されずに相対的基準Ⅰ、Ⅱの両方で観察されれば、メスはオス間の形質値の差を手がかりにした相対的な基準でオスを選好している事になる。もし相対的基準Ⅰで何らかの傾向が見られて相対的基準Ⅱで見られなければ、メスの選好性にとって相対的な基準と絶対的な基準の両方が関わっていると考えられる。
材料
実験に用いたグッピーは静岡県下田市の生活用水路で採集し、飼育した。水路の水温は温泉の湯の流入によって25℃以上に維持されていた。また、この水路にグッピーが導入されたのは少なくとも50年以上前である。
採集したグッピーは120cm×45cm×45cmの水槽で、200匹以上で飼育した。
飼育には、エサとしてテトラミンフレーク(製造元:ドイツ テトラベルケ社、輸入発売元:ワーナー・ランバート株式会社)をくだいて与えた。120cm×45cm×45cmの水槽はヒーターとサーモスタットにより常に水温を23℃に保った。形質値を計測したオスと処女メスは、室温を23℃に保ち光環境を蛍光灯により一定にした窓のない環境制御室で飼育した。120cm×45cm×45cmの水槽と環境制御室はともに、タイマーで制御した蛍光灯によって一日12時間光を当てて12時間を暗くした。一月に一度、水槽の水を半分交換した。120cm×45cm×45cmの水槽は一月に一度、フィルターも清掃した。
実験には、静岡から採集した集団のF1処女メスを用いた。採集した集団のメスが産んだ稚魚を隔離し、20cm×15cm×10cmの水槽で飼育した。雌雄が識別できしだい、さらにメスを隔離して、処女メスを得た。
実験に用いたオス204個体は、静岡から採集した集団とその2~3世代目から任意に選び出した。オス形質の測定については、詳細に後述する。
実験装置
実験装置は、Brooks (2000)をもとに作成した。実験水槽は40cm×40cm×12cmのタンクに7cm×7cm×6cmのエンクロージャーを入れたものである(Figure 2)。エンクロージャーとはオスを入れるための小部屋である。メスをタンクの中央に入れると、メスはエンクロージャーの中にいるオスを自由に調べる事ができる。
タンクは厚さ3mmのアクリル板で製作し、壁面の反射でメスが落ち着かなくなるのを避けるために、内側に厚さ2mmのコルク板をはった。エンクロージャーは厚さ2mmの白色アクリル板で製作し、タンクと同様の理由で、外側に厚さ2mmのコルク板をはった。エンクロージャーの壁の一面を透明にし、マジックミラーを入れた。これは、外のメスから中のオスは見えるがオスからはメスが見えないような状態にして、オスの求愛行動がメスの選択に与える影響を排除するためである。また、マジックミラーの効力を高めるために内側の壁面は白色アクリル版をむきだしにし、黒いふたをして内部だけ豆電球で照らした。
次に、エンクロージャーの透明な一面が互いに、またタンクの壁から等距離(7cm)になるようにエンクロージャーを配置した。絶対的基準の場合はエンクロージャーを対角線上(2通り)に2個配置して片方にオスを入れ、相対的基準の場合は4個配置して対角線上(2通り)の2個にオスを入れた。絶対的基準の場合は2個のエンクロージャーが互い違いの向きになるように、相対的基準の場合は4個のエンクロージャーが決して向き合わないように、配置した。エンクロージャーの位置と向き、どのエンクロージャーにオスを入れるか、はランダムに決定した。
タンクには23℃に温度を調節した水を6l入れて、実験を行った。
選好性実験
選好性実験は以下の手順で行った。
まずエンクロージャーにオスを入れた。オスの導入から10分後、オスがエンクロージャーにある程度慣れた頃に、タンクの中央にメスを入れた。1時間、メスをタンクとエンクロージャーに慣れさせ、その後20分間ビデオで撮影した。
撮影はタンクの上方120cmに設置したビデオカメラで行った。撮影の間メスからタンクの周囲が見えないように、タンクの周囲を高さ120cmまで暗幕で覆い、タンクの一辺の真上120cmから暗幕の内側を蛍光灯で照らした。
ソードテイルの仲間(Xiphophorus montezumae, Xiphophorus nigrensis, Xiphophorus cortezi)では他個体のにおいを認識しているという報告例(McLennan and Ryan, 1997)があり、さらにグッピーでは他のメスの配偶者選択をまねる例(Dugatkin, 1992, 1997)が知られている。他のメスのにおいが実験中のメスの選好性に影響する可能性が排除できなかったので、1回実験を行うごとにタンクの水を入れ替えた。
次に選好性実験を撮影したビデオを再生し、メスがエンクロージャーの透明面から2cm以内に滞在した時間と、出入りした回数を計測した。あるエンクロージャーへのメスの訪問回数と滞在一回あたりの滞在時間を、そのエンクロージャーに入っていたオスに対するメスの反応値として解析した。
1匹のメスにたいして15回の選好性実験を行った。絶対的基準、相対的基準Ⅰ、相対的基準Ⅱそれぞれに、15匹のメスを用いた(つまり、全部で675回の選好性実験を行った)。
オスの形質の測定
オスの形質(体サイズ、尾長、オレンジカラースポットの面積、オレンジカラースポットの明るさ、黒カラースポットの面積、黒カラースポットの明るさ)はデジタルカメラで撮った写真をもとに、以下の手順でPhotoshop 5.0(Adobe社)を使って計測した。
オスは、静岡から採集した集団とその2~3世代目から204匹のオスを任意に選び出した。オスの形質を計測するためにデジタルカメラで16cmの高さから両面を撮影した。1cm×1cmのスケールと赤・青・黄のコントロールカラーを、すべての写真にグッピーと並べて撮り入れた。光条件を一定にするために、蛍光灯によって光環境を調節した窓のない実験室で撮影を行った。
その後、デジタル画像をコンピュータ(Power Macintosh G3)に取り込み、Photoshop 5.0を用いて、体サイズ、尾長、体色(オレンジ、黒)の面積とRGBの値を計測した。RGBの値は、色見本3色(赤・青・黄)、グッピーの体色(オレンジ、黒)、それぞれから6点ずつ計測し、計測点の平均を算出した。体サイズ、尾長、体色の面積の値は、cm単位に変換した。
RGBとは色情報を数値化したカラーモデルのひとつで、赤(Red、R)、緑(Green, G)、青(Blue, B)によって色を表現する。スキャナ、モニタ、デジタルカメラ、カラーテレビに使用されている。再現色をRGBの3つの値で表現し、これらの値を変更してさまざまな色を指定する(加色混合)。モニタはこの方式でR、G、Bの信号を変化させてカラーを表現している。
撮影の際に光条件と撮影の距離は一定にしたが、サイズと色が写真ごとに違っている可能性があった。この違いをそろえるために補正を行った。補正とはつまり、「1cm×1cmスケールのサイズや色見本のRGBの値を全写真で平均した値」に対する「ある写真における1cm×1cmスケールのサイズや色見本のRGBの値」の比率を考え、その比率をもとにして、すべての写真における体サイズ、尾長、体色(オレンジ、黒)の面積とRGBの値を、一定の基準にそろえようとするものである。たとえば体サイズを補正しようとするなら、詳しい計算方法は以下のようになる。
(補正後の体サイズ)=(ある写真におけるグッピーの体サイズ)×(1cm×1cmスケールのピクセル数を全写真で平均した値)/(ある写真における1cm×1cmピクセル数)
同様の方法で体色の黒の RGBの値も、「色見本3色(赤・青・黄)のRGBの値を全写真で平均した値」に対する「ある写真における色見本のRGBの値」の比率を用いて補正した。ただし、体色のオレンジでは色見本2色(赤・黄)のみのRGBの値を用いて補正した。これは、Photoshop 5.0においてある色がオレンジ色かどうかはおもにRGによって決定されるが、色見本の青では赤・黄に比べRGが大きくばらついたためである。
実験に用いたオスの選択
計測し補正した形質値をもとに、実験に用いるオス個体を選び出した。体色のオレンジのR値に対するメスの選好性を調べるために、体色のオレンジのR値以外の形質値をコントロールした。オレンジのR値は体色のオレンジの明るさを表すと考えられる。まず、体色のオレンジのR値以外の形質値、それぞれの分散の大きさが等しくなるように、オス個体を選び出した。その結果、体色のオレンジのR値はばらついているが、それ以外の形質値の分散が等しいオス群を、選び出す事ができた。さらに絶対的基準と相対的基準Ⅰの場合は、体色のオレンジのR値の大きさをもとにオスを5段階のクラスターに分け、クラスター内での体色のオレンジのR値の分散がすべてのクラスターにおいて等しくなるようした。その結果、同じあるいは類似したオレンジのR値をもつオスの間でのR値以外の形質値の分散は、異なるオレンジのR値をもつオスの間でのR値以外の形質値の分散と等しくなった。ここで、あるオスに対するメスの反応値(滞在時間)は、そのオスが属するクラスターでの体色のオレンジのR値の平均(クラスターの代表値)に対するメスの反応値とする事ができる。相対的基準Ⅱの場合は、選び出したオス同士の間で、体色のオレンジのR値の差をすべての組み合わせについて求め、差を5段階のクラスターに分けた。以上の方法で実験に用いたオスを選び出した結果、体色のオレンジのR値以外の形質値がメスの反応に与える影響のばらつきを、すべての実験でそろえる事ができた。
解析方法
訪問回数と滞在一回あたりの滞在時間(滞在時間/訪問回数)を計算し、メスの反応値とした。絶対的基準では、オスの形質値に対してメスの反応値をプロットした。相対的基準Ⅰ、Ⅱでは、一回の実験に用いた2個体のオスの形質値の差に対して、各オスに対するメスの反応値の差をプロットした(Figure 1を参考にした)。単回帰ではR2値の危険率と回帰係数の危険率は等しいので、メスごとに6個の値を求めたことになる。ただしこの状態では、絶対的基準、相対的基準Ⅰ、相対的基準Ⅱの各条件で、オス形質値の範囲が異なる(絶対的基準:52.91~92.9、相対的基準Ⅰ(差):3.1~47.4、相対的基準Ⅱ(差):3.1~47.4)ため、直接比較する事ができなかった。そこで、3条件5段階ずつのクラスター(計15クラスター)の範囲をそろえるために、条件ごとにクラスターの代表値をZ変換した。Z変換の計算方法は、以下のとおりである。
(クラスターの代表値のZ値)={(クラスターの代表値)-(条件内のクラスターの代表値5個の平均)}/(条件内のクラスターの代表値5個の分散)
このZ変換によって、各条件内のクラスターの代表値5個は3条件すべてにおいて、平均0分散1をとった。
次に、絶対的基準と相対的基準Ⅰ、Ⅱの間で、回帰のあてはまりに差があるかどうか調べるために、R2値、危険率、回帰係数、各回帰係数の危険率、計6種類の値を用いた。今回の解析では、それぞれの処理(絶対的基準と相対的基準Ⅰ、Ⅱ)で実験回数(サンプルサイズ)は等しいので、各メスごとの危険率の大きさを比べることで、回帰のあてはめの良さを比べることができる。これらの値の比較には、分散分析を用いた。ただし、危険率は比率なので、逆正弦変換の後に分散分析を行った。
Brooks and Endler(2001b)は、エンクロージャーごとの場所の効果を排除するために標準化をしていた。Brooksの標準化方法は、エンクロージャーごとに滞在時間の平均値を求め、各滞在時間からこの平均値をひいた残差をオスの反応値とするものだった。しかし今回の実験では、エンクロージャー内の分散がエンクロージャー間の分散より大きかったので、Brooksの方法で標準化する意味はないと判断し、標準化しないデータを用いた。
結果
メスの反応を一回あたりの滞在時間と訪問回数を用いて調べた。オスの形質値に対するメスの反応値を単回帰、および多項式回帰した。
まず、一回あたりの滞在時間(平均滞在時間)について、絶対的基準、相対的基準Ⅰ、相対的基準Ⅱそれぞれにおける、単回帰、多項式回帰の各R2値、と危険率、各回帰係数(単回帰のxと多項式回帰のx2とx)の危険率、計6個の値をTable 1に示した。単回帰、多項式回帰をあわせ見た時、回帰式のあてはまりの有意性を示す危険率が10%以下の個体は、相対的基準Ⅱの多項式回帰の場合がもっとも多く、5個体であった。絶対的基準では2個体、相対的基準Ⅰでは1個体であった。回帰式のあてはまりのよさを危険率で比較すると、多項式回帰のx2の係数の危険率は、相対的基準Ⅱでほぼ有意に低く、絶対的基準と相対的基準Ⅰよりも回帰式のあてはまりがよかった(ANOVA, df=2,42, F=3.128, p=0.054)。
次に、訪問回数について、絶対的基準、相対的基準Ⅰ、相対的基準Ⅱそれぞれにおける、単回帰、多項式回帰の各R2値、と危険率、各回帰係数(単回帰のxと多項式回帰のx2とx)の危険率、計6個の値をTable 2に示した。単回帰、多項式回帰の両方で見た時、危険率が10%以下の個体は、絶対的基準で5個体、相対的基準Ⅰで2個体、相対的基準Ⅱで2個体であった。しかし、回帰式のあてはまりのよさを危険率で比較すると、上記の6個の値すべてについて、絶対的基準、相対的基準Ⅰ、相対的基準Ⅱの平均値の間に有意な差は見られなかった(単回帰の危険率 ANOVA, df=2,42, F=1.011, p=0.372; 多項式回帰の危険率 ANOVA, df=2,42, F=0.393, p=0.677; 単回帰のR2値 ANOVA, df=2,42, F=0.653, p=0.526; 多項式回帰のR2値 ANOVA, df=2,42, F=0.466, p=0.631; 単回帰のx ANOVA, df=2,42, F=1.011, p=0.372; 多項式回帰のx2 ANOVA, df=2,42, F=0.151, p=0.861; 多項式回帰のx ANOVA, df=2,42, F=1.381, p=0.263)。
メスのpreference functionがオス形質の頻度分布に与える影響を推定するために、絶対的基準において、訪問回数の回帰式の形状と頂点の位置を調べた。危険率が低かった回帰式7個のうち4個が単回帰直線で、4個のうち2個が正の傾きを持ち2個が負の傾きを示した。残りの3個の多項式回帰曲線はすべてx2の回帰係数が負で、山形の形状であった。多項式回帰曲線3個の頂点は、オスの形質値になおしたところ77.6~80.9の範囲となった (Figure 3)。
また、実験に用いたオス集団における、形質(オレンジのR値)の頻度分布を調べた。実験のために写真を撮って測定した204個体のオスの、形質値の度数分布をFigure 3に示した。度数分布の頂点は87.2~92.5の範囲であった。絶対的基準において、メスがよく訪問したオスの形質値と、集団で最も頻度の高いオスの形質値は、一致しなかった。
考察
preference functionの基準は絶対的か相対的か?
1回あたりの滞在時間について、オスの形質値に対してメスの反応値を回帰した時のあてはまりが、相対的基準Ⅱでよかった。この結果は、グッピーのメスがオスを相対的な基準で選んでいる事を示している。メスの相対的な選好性はトゲウオ(G. aculeatus)でも報告されている(Bakker and Milinski, 1991)。だが、相対的という点では相対的基準Ⅰも相対的基準Ⅱも同じ条件であるのにもかかわらず、相対的基準Ⅰの方があてはまりが悪かった。考えられる理由としては、オスの一方の形質値を固定した事があげられる。相対的基準Ⅰの場合、形質値が最小の個体を固定したので、固定したオスは全部で3個体だった。しかも1匹はかなり初期に死んだので、ほとんど2個体だった。つまりメスにとっては、片方のオスはかならず実験の場にいるfamiliarな個体である。Hughes et al.(1999)によれば、グッピーのメスは好んでいたオスがfamiliarになると選ばなくなる傾向がある。その結果、固定されたオスは選好の対象から外れ、メスは新規な固定されていないオスだけを選好の対象とする、という状況になったと考えられる。つまり絶対的基準の時と同じ状況が実現したと考えられる。
訪問回数について、オスの形質に対してメスの反応値を回帰したところ、絶対的基準であてはまりがいいメスの数が多かったが、相対的基準Ⅰや相対的基準Ⅱと比べると差はなかった。しかし、今回の実験では、メス個体内の反応のばらつきが大きかったので、全体的に回帰のあてはまりが悪かった。その中で、回帰のあてはまりがいいメスの数が絶対的反応で多かった事は、訪問回数が絶対的反応である可能性を示唆するかもしれない。また、メスが絶対的基準でオスを選んでいるときは、相対的基準の実験でも、同様にオスの形質値とメスの反応の間の関係が現れてくる。このことが、絶対的基準と相対的基準の間で、回帰のはてはまりに差がみられなかった理由だとすると、訪問回数に関しては、メスは絶対的な基準でオスに反応している可能性もある。
しかし、絶対的基準条件における訪問回数について、危険率が低かった多項式回帰曲線(3個)の頂点は、すべて77.6~80.9の範囲をとり、オスの形質値の頻度分布と比べると一致しなかった。
メスの選択的な訪問が訪問されるオスを有利にするならば、訪問回数に関する回帰曲線の頂点の位置は、オス形質の頻度分布の頂点と一致するだろう。たとえばAndersson(1994)は、「どれだけ速く交配相手と接触できるか」(scramble)を、配偶者をめぐる競争における主要なメカニズムとして分類している。またHoude(1997)も、メスの配偶者選択とは別に、オスグッピーの繁殖成功を左右するようなオス間競争の1つとしてscramble competitionをあげている。つまり、一般にメスの接近はオスの交尾確率を左右する要因の1つである。その場合、訪問されやすい形質は集団中で頻度が高くなり、訪問されやすい形質と集団中で頻度が高いオス形質が一致するようになると考えられる。
しかし、今回の実験では、形質の頻度分布と訪問回数に関する回帰曲線の頂点の位置は一致しなかった。これには2つの理由が考えられる。1つめは、メスの選好性が個体間で異なる事の効果である。しかし、危険率が低かった回帰線のうち7個のうち3個が同一範囲内に頂点を持つ多項式回帰曲線で、傾きが正の直線回帰が2個だった事を考えると、もっとオス形質の範囲を広げて調べたとしても、多項式回帰の頂点がオスの形質値の広い範囲に分散しているような状況は考えにくい(Figure 3参照)。2つめは、上で述べたような、相対的反応の存在である。メスが相対的な選好性を持っていて訪問したオスの中からさらに配偶者を選ぶので、訪問回数だけではオス形質の分布が決定しない、ということが考えられる。
つまり、メスが絶対的基準もあわせ持っている可能性はあるが、選好性を決定しているのは相対基準であると考えられる。つまり、グッピーのメスにおいては、あるオスを見た時にそのオスを配偶者として選ぶかどうかは、相対的基準で決定されていると思われる。
性選択とpreference functionの基準
本研究では、グッピーのメスの配偶者選択では相対的基準(平均滞在時間)が重要である可能性が示された。しかし、この結果をグッピーにおける性選択の問題から考える場合には、配偶者選択の利点とコストについても考えなければならない。なぜなら、性選択の進化に関する理論研究において、選好性のコストは重要な問題だからである(Pomiankowski et al., 1991)。
一般的に、相対的基準と比較した場合、絶対的基準を用いる利点はgood geneモデルを考えると、容易に推測できる。性選択理論において、メスの選好性と好まれるオス形質を説明するモデルの一つにgood geneモデルがあり(Andersson, 1994) 、good geneモデルが働いていると仮定した場合にはメスは絶対的基準でオスを選好するほうがよい。good geneモデルでは、極端なオス形質の進化とそれに対するメスの選好性を、オス形質が生存力に関わる遺伝子の忠実な指標である時、「生存に不利に見えるような極端なオス形質」に対するメスの選好性が進化する、というメカニズムで説明する。しかし、生存力に関わる遺伝子の指標となるような性選択形質にもそれを好む選好性にもコストがかかるので、形質と選好性が集団中に維持されるためには、条件依存的な形質を仮定する必要があると言われている(Iwasa et al., 1991)。つまり、オスは条件(健康、栄養状態など)がいい時に、極端な性選択形質を発現することになる。オスの条件依存的な形質についてはグッピーでも、カロチノイド摂取量とオレンジカラースポット、行動などの関係についてよく調べられている(Kodric-Brown, 1989; Nicoletto, 1991; Nicoletto, 1993)。また、メスに好まれるオスの子は、オスでもメスでもよく繁殖に成功することも報告されている(Reynolds and Gross, 1992)。もしグッピーにおいて、オス形質がgood geneを反映しているなら、メスは絶対的基準を用いれば確実に生存力が高いオスと交尾できる。一方で相対的基準を用いた場合には、どういう形質のオスを比べるかによっては、メスは生存力がそれほど高くないオスと交尾してしまう可能性がある。この時、メスの選好性のコストは補われないだろう。
good geneモデルの場合と同様に、視覚情報の処理システムを考えた時も、相対的基準と比べて絶対的基準を用いる利点は推測しやすい。感覚器官で受容された情報は、質の違いで分けられ、さらにその質がどの程度の強さで、どの程度持続するかという時系列の情報として感覚神経を介して中枢に送られる(和田、2001)とすると、感覚システムは絶対的な情報を伝達する。つまり、感覚システムにおいて絶対的基準による情報処理は単純なメカニズムで行われる可能性がある。一方で相対的基準では、感覚システムにおいて情報の統合や比較が必要になると考えられる。したがって相対的基準は、感覚システムにおいては複雑な情報処理を必要とすると考えられる。Reuven(1999)は、動物の記憶についての議論の中で認知システムに分子生物学的、あるいは生理学的なコストがかかる可能性を議論している。これによれば、たとえば、神経回路を増やして認知システムを複雑にするためには余分にエネルギーを配分する必要があり、コストになる。つまり、相対的基準は絶対的基準に比べてコストがかかると考えられる。
では、絶対的基準と比べて相対的基準を用いる事はコストがかかると推測できるにもかかわらず、なぜ、グッピーのメスは、相対的基準でオスを選好するのだろうか?冒頭で述べたようなサンプリングの問題を考えると、相対的基準を用いたほうがメスにとって利益になるような条件を推測できる。Janetos(1980)は、シミュレーション研究によって、サンプル数が限られた時に、固定基準による選好性(fixed-threshold strategy)を用いるメスの適応度はランダムにオスを選ぶメスよりも低くなる事を示した。これに対して相対的基準による選好性を用いた場合には、サンプル数に関わらずメスの適応度はランダムに選んだ場合よりも高くなった。つまり、サンプル数が限られた場合には、相対的基準を用いる方がメスにとって利益になる。グッピーのメスは、移動範囲がせまかったり、強制交尾の可能性によって配偶者選択の機会を制限されたりして、サンプリングが制限される可能性がある。その結果、相対的基準によってオスを選ぶ利益が生じるのかもしれない。その利益は、絶対的基準と相対的基準を併用するコストを上回るのかもしれない。
一方で、グッピーのメスのサンプリング行動を考えると、グッピーのメスは生まれた局所集団にとどまる傾向がある事が知られており(Griffiths and Magurran, 1998)、また、妊娠中は交尾を受け入れず産子後も数日で妊娠する事が報告されている(Houde, 1997)。つまり、メスは妊娠と妊娠の間の短い期間に接近してくるオスの中から交配相手を選ぶ事になり、サンプリング範囲はオスの移動範囲に依存するだろう。一方、オスの移動範囲は、オスの交尾意欲が高い場合に広くなるだろう。たとえばMagurran(1998)は、グッピーが種分化しない原因の1つとして、オスの交尾意欲が高く、sneakによる強制交尾(捕食圧が低いところでは約1回/分)によってメスの選好性の実現が妨げられる可能性をあげている。つまり、オスが交尾頻度を上げるために移動距離を増やしたとしても、強制交尾が実現したり、強制交尾によって配偶者選択が妨害されたりすれば、やはりメスのサンプリングは制限される事になるかもしれない。その結果、グッピーのメスは相対的基準を用いる利益が生じるだろう。
しかし、これ以上の議論を展開するためには、メスによる交配相手のサンプリングが実際にどれだけ制限されているかを調べる必要があるだろう。また、冒頭で述べたように、サンプリングが限られていて、かつ相対的基準による選好性が用いられているなら、frequency-dependent sexual selectionが実現している可能性がある。にもかかわらず、なぜグッピーで種分化が観察されないのか、という問題についても、さらに検討しなければならない。特に、絶対的基準と相対的基準の併用が、どちらか一方だけが用いられる場合と比べて、オスの繁殖成功をどのように変化させ、その結果オス形質に対してどのような性選択圧がかかるのか、を明らかにする必要があるだろう。
実験の問題点
この実験では、メス間の選好性のばらつきが存在しただけでなく、あるオスの形質値に対して1個体のメスが返す反応のばらつきが大きかったために、有意差が出る回帰が少なかった。この理由として、実験に使用した静岡の個体群の問題が考えられる。Endler and Houde(1995)では、オス形質に対するメスの選好性を、メス1個体ごとではなく全個体について相関を調べた。そして、形質とメスの選好性に相関が見られる個体群と見られない個体群がある事を示した。つまり、個体群によって、オス形質とメスの選好性に相関がない場合がある。たとえば、個体群内でメスの選好性の遺伝分散が維持されていなければ、選好性実験をくり返した時にメスが同じ反応を返す確率が低くなる。したがって、今回の実験でメスの反応がばらついていた原因は、静岡の個体群にあるかもしれない。
ただし、今回の実験で回帰に有意差が見られなかった理由が、実験方法の問題なのか実験に使用した個体群の問題なのかは、同じ個体群で異なる実験方法を用いて確かめる必要がある。さらに、異なる個体群で同じ実験方法を用いても、確かめる必要がある。
結論
結論として、今回の実験では、統計的に完全に支持されたわけではないが、グッピーのメスの選好性は相対的基準によって決定されている事を示した。一方で、メスの選好性に、絶対的基準でオスに反応する要素がある可能性は完全には排除できなかった。しかし、オスの形質値に対する性選択圧としては、絶対的基準は重要でないことが示唆された。
謝辞
本研究の報告を終えるにあたり、研究全般および論文作成についてご指導をいただきました河田雅圭博士に心から感謝申し上げます。狩野賢司博士には、グッピーのオス形質の計測や実験装置の作成など、実験全般に関して、貴重なご助言をいただきました。また、横山潤博士にも様々なご助言をいただきました。さらに、東北大学生命科学研究科の吉田卓司氏には、グッピーの飼育、実験において貴重なご助力をいただきました。東北大学理学研究科の澤田寛、松島野枝の諸氏には、グッピーの採集においてご助力をいただきました。厚くお礼申し上げます。
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